統合失調症の方にしてはいけないこととは?接し方のポイントを解説
統合失調症は幻覚や妄想などの症状が現れる精神疾患です。
主な治療方法として薬物療法や精神科リハビリテーションなどがありますが、それと同時に周囲の理解やサポートも必要になります。
そして本人に負担のかかるような言葉をかけるのも、症状が悪化する原因になるため注意が必要です。
この記事では統合失調症の方にしてはいけないことについて解説します。
統合失調症の方への接し方のポイントや再発サインについてもまとめているため、周囲に統合失調症の患者さんがいる方はぜひ参考にしてみてください。
統合失調症は周囲の理解とサポートが大切
統合失調症は周囲の理解とサポートが大切な精神疾患です。
ここでは統合失調症の症状や原因、サポートの重要性について解説します。
統合失調症とは
統合失調症とは、幻覚や妄想、混乱した思考、感情の鈍化といった症状を引き起こす精神疾患の一つです。
特に幻覚や妄想などの症状がみられることが多く、現実に起きていないことを現実と思い込んでしまう特徴があります。
こうした幻覚や妄想は、患者さん本人はなかなか気づけない症状のため、周囲の人が病院の受診を促したりサポートしてあげたりすることが大切です。
日本には統合失調症の患者さんは約80万人いるとされており、生涯のうちに発症する人は全体の人口の0.7%ともいわれています。
つまり約100人に1人が発症する病気のため、身近な病気といえるでしょう。
統合失調症の原因
統合失調症の原因については、まだはっきりとはわかっていません。
しかしドパミンなどの脳の神経伝達物質の異常や過度なストレス、遺伝的な要因など、さまざまな要因が重なって発症するのではないかと考えられています。
統合失調症の発症リスクが高まりやすい要因としては、仕事や人間関係のストレス、就職や結婚といった環境の変化による緊張などが挙げられます。
統合失調症のサイン・症状
統合失調症の症状は、健康なときにはなかった状態が起こる「陽性症状」と、健康なときにあったものが失われる「陰性症状」の2つに分けられます。
陽性症状は主に現実とは異なる体験を伴う症状のことで、幻聴や妄想といった症状が当てはまります。
陽性症状に多く見られるのが、幻聴や被害妄想です。
陰性症状は健康的な状態から機能が低下したり欠如した状態のことで、感情の平板化や無気力などが挙げられます。
以前よりも意欲が低下したり感情表現が少なくなったりするのは陰性症状の一つのため、これらの症状が見られたら統合失調症の可能性が考えられます。
周囲から見てわかる統合失調症の具体的なサインは以下の通りです。
- いつも不安そうで緊張している
- ぶつぶつと独り言を言っている
- にやにやと笑うことが多い
- 悪口を言われた、いじめを受けたと訴えるが、現実には何も起きていない
- 監視や盗聴を受けていると訴えるが、何も見つけられない
- 話にまとまりがなく、何を伝えたいのかわからない
- 作業のミスが多い
- 人付き合いを避けて自宅にひきこもるようになった
- 感情表現が少なくなる
- 身なりがだらしなくなった
上記のようなサインが見られたら統合失調症の可能性が考えられるため、本人に病院の受診を促してあげましょう。
統合失調症を治すためには周囲の理解とサポートが必要
統合失調症を治すためには、周囲の理解とサポートが必要です。
統合失調症の今までに体験したことのない不安や緊張を感じ、幻覚や妄想などの症状から周囲の人に対して不信感を抱いてしまいがちです。
周囲の人が本人の気持ちに寄り添いつつ、サポートしてあげることが大切になります。
統合失調症の方にしてはいけないこと
統合失調症の方にしてはいけないこととして、以下が挙げられます。
- 本人を批判する
- 敵意のある感情をぶつける
- 過保護・過干渉になる
- 妄想や幻覚症状を否定する
- 本人の負担を考えずに仕事を押し付ける
- 本人が限界を感じても休ませない
- 処方薬の服用をやめさせる
ここでは上記7つについてそれぞれ解説します。
本人を批判する
統合失調症の患者さんを批判するような言葉は避けましょう。
例えば「そんなんじゃ治らないよ」「ネガティブすぎる」「何もしないでごろごろしてる」といった言葉は、感情が敏感になっている患者さん本人が深刻にとらえてしまう恐れがあります。
何か言葉をかけるときは決して本人を批判せず、気持ちに寄り添うように優しい言葉を選びましょう。
敵意のある感情をぶつける
統合失調症の患者さんに対し、敵意のある感情をぶつけないようにしましょう。
例えば「あなたのせいで人生台無しになった」「いっそあなたがいなければ」といったような敵意のある感情は、患者さんを深く傷つけてしまいます。
症状が回復傾向にあっても、このような言葉をぶつけてしまうと再発の引き金にもなるため、十分に気を付けましょう。
過保護・過干渉になる
統合失調症は周囲のサポートが大切な精神疾患ですが、過保護・過干渉になるのもよくありません。
例えば「この子は将来どうなってしまうのだろう」「ちゃんと仕事に就けるのだろうか」といった心配や不安を口にすると、患者さんが気にしすぎてしまい、より不安な気持ちが強くなる恐れがあります。
過度な不安や心配からの言動は避け、患者さんがポジティブになれるような優しい言葉をかけてあげましょう。
妄想や幻覚症状を否定する
統合失調症の主な症状に妄想や幻覚症状が挙げられますが、これらの症状を否定するのもよくありません。
例えば「それは妄想だよ」「おかしなことを言わないで」といったように症状を否定するような言葉をかけると、周囲へ抱く不信感が高まり、かえって症状が悪化することがあります。
患者さんの不安を加速させるような言動は控えましょう。
妄想や幻覚症状を訴える患者さんに対しては、その症状を受け止めた上で、優しく声掛けをすることが大切です。
本人の負担を考えずに仕事を押し付ける
統合失調症の方にしてはいけないこととして、本人の負担を考えずに仕事を押し付けることが挙げられます。
本人の負担を無視して仕事を押し付けると、さらに症状が悪化する恐れがあります。
症状によっては、一度仕事を休み、治療に専念してもらうという判断も大切です。
本人が限界を感じても休ませない
統合失調症の患者さん本人が身体的・精神的に疲れているような様子が見られるときは、無理せず休ませましょう。
休まずに仕事を続けさせると、身体的・精神的な負担からさらに症状が悪化する恐れがあります。
患者さんによっては、自分から疲れを訴えられず頑張りすぎてしまう場合もあるため、周囲の方が声をかけてあげることも大切です。
処方薬の服用をやめさせる
統合失調症の治療では薬が処方される場合がありますが、処方薬の服用を勝手にやめさせるのは絶対にしてはいけません。
勝手に自己判断で薬の服用をやめさせると、症状が悪化したり再発したりする恐れがあります。
副作用や効果について疑問がある場合は、必ず医師に相談しましょう。
統合失調症の方への接し方のポイント
統合失調症の方への接し方のポイントは以下の通りです。
- 病院の受診を促す
- 本人を否定・攻撃するような言葉を投げない
- 本人のペースを尊重して見守る
- 服薬を強制せずサポートする
- 主治医と十分にコミュニケーションを取る
ここでは上記5つのポイントについてそれぞれ解説します。
病院の受診を促す
統合失調症の方に対しては、病院の受診を促しましょう。
現実にはないようなこと(いじめを受けている、悪口を言われている、監視されているなど)を訴える場合、統合失調症の可能性が考えられます。
そのような状態を無視していると、次第に症状が悪化してしまう恐れがあります。
統合失調症は早期治療により症状の悪化を防げるため、少しでも気になる言動がある場合は早めに病院の受診を促しましょう。
受診を促す際は、「統合失調症かもしれないから病院行きなよ」といったダイレクトな言葉ではなく、「最近疲れているように見えて心配だから、病院を受診してみたら?」と優しい言葉を心がけることが大切です。
本人を否定・攻撃するような言葉を投げない
統合失調症の患者さんに対して、本人を否定・攻撃するような言葉を投げないように気を付けましょう。
妄想や幻覚症状を否定する言葉も不信感を高めたり傷つけたりする恐れがあるため、症状を否定せずに受け止めてあげることが大切です。
自分は味方であることを伝えながら、治療のサポートをしてあげましょう。
本人のペースを尊重して見守る
統合失調症の治療は、本人のペースを尊重して見守ることが大切です。
周囲の人が不安になりすぎたり回復を焦ったりしてしまうと、逆にそれが本人にとって負担になってしまいます。
たとえ時間がかかってしまったとしても本人の意思とペースを尊重し、周囲の人は過保護・過干渉にならないように気を付けましょう。
どうしても助けが必要なときだけ、サポートしてあげてください。
服薬を強制せずサポートする
統合失調症の治療では、服薬を強制せずサポートすることも大切になります。
統合失調症では患者さんの認知機能が低下してしまうことで、薬の飲み忘れや過剰な服用をしてしまったり、病識の欠如から服薬の拒否などをすることが少なくありません。
このようなケースで服薬を強制すると、「何かを無理やり飲ませようとしてくる」と被害的になってしまい、治療が困難になる恐れがあります。
薬を拒否する場合は無理やり飲ませるのではなく、優しく促すようにしてサポートしましょう。
主治医と十分にコミュニケーションを取る
統合失調症の治療では、主治医と十分にコミュニケーションを取ることが大切です。
患者さんの様子をきちんと主治医に伝えることで、より適切な治療を行えるようになります。
主治医と十分にコミュニケーションを取ることで、気軽に相談できる関係性を築き、困ったことがある際も適切な対処が行えるようになるでしょう。
統合失調症の方への接し方の例
統合失調症の方に対する正しい接し方の例を紹介します。
家族・パートナー
家族やパートナーが統合失調症になった場合は、以下のような接し方を心がけましょう。
- 安心できる環境を作る
- 規則正しい生活をサポートする
- 服薬管理をサポートする
家族やパートナーは本人にとって安心できる場所になるため、安心して休める環境づくりが重要になります。
また本人がネガティブになったり元気がなくなったりすると、「外に連れ出して気分転換させたほうがいいのでは?」と考える方もいるかもしれません。
しかしこのような行動はかえって疲労感が増したり症状が悪化したりする場合もあるため、無理に行動を強制しないように注意しましょう。
友人
統合失調症の友人に対する接し方のポイントは以下の通りです。
- 話を聞く
- 距離感を保つ
普段とは異なる友人の様子に戸惑ってしまうこともあるかもしれませんが、無理に話を聞きだしたり原因を追究したりするのではなく、適度に距離感を保つことが大切です。
「いつでも話を聞くからね」といったように、相手の気持ちに寄り添う優しい言葉をかけるとよいでしょう。
職場の同僚・部下
統合失調症の職場の同僚・部下に対する接し方のポイントとして、以下が挙げられます。
- 症状が出た場合の対応を決めておく
- 合理的配慮の内容についてすり合わせる
合理的配慮とは、障害のある方が働きやすい環境を整えるためのものです。
例えば本人の体調に合わせて勤務時間や業務量を調整するのも、合理的配慮の一つになります。
このような対応を事前にすり合わせておくことで、本人が働きやすい環境を整えられます。
統合失調症の再発サインを見逃さないことも大切
統合失調症は再発しやすい病気のため、症状が改善した後も再発サインを見逃さないことが大切です。
統合失調症の再発サインとして、以下のようなものが挙げられます。
- 眠れない日が続くようになる
- イライラしている
- 食欲が落ちている
- 焦りや不安を訴えることが多くなる
- そわそわして落ち着きがなくなる
- ぼーっと考え込む
- 被害的で疑い深くなる
- 普段より過活動になったり、行動的になる
上記のようにいつもと違った様子が見られた場合は、なるべく早めに病院の受診を促しましょう。
まとめ
統合失調症の患者さんにしてはいけないこととして、本人を批判したり攻撃的な言葉を投げたり、過保護・過干渉になったり、負担を考えずに仕事を押し付けたりすることが挙げられます。
このような行動は症状の悪化や再発の引き金となり得るため、十分注意しましょう。
また統合失調症は再発しやすい病気のため、治療後も気になる症状が見られたらすぐに病院の受診を促すことが大切です。
『金山こころとねむりのクリニック』では、患者さんの負担を抑えた最小限の薬物療法を行っています。
当院では安心してお話しいただけるよう、やさしく丁寧に対応いたします。「こんなことで受診してもいいのかな?」という気持ちでも構いません。ぜひお気軽にご相談ください。