TMS(経頭蓋磁気刺激)とは?薬に頼らない新しいうつ治療
経頭蓋磁気刺激(TMS: Transcranial Magnetic Stimulation)とは、頭部に磁場を当てることで脳内に微弱な電流を誘発し、神経細胞を刺激する非侵襲的な治療法です。
麻酔や手術を必要とせず、外来で実施できるため身体的負担が少なく、安全性の高い治療選択肢として注目されています。
治療後もすぐに日常生活に戻れます。
うつ病に悩む方の中には、「できるだけ薬に頼りたくない」「副作用がつらくて薬を続けられない」「薬を飲んでいるのに効果を実感できない」と感じている方も少なくありません。
当院では、こうしたお悩みに応えるため、TMS治療を自由診療にてご提供しています。
TMS治療は、新しいうつ病治療の選択肢であり、副作用が少ない点も大きな特徴です。
そもそもTMSは効果があるの?― データで見る新しいうつ病治療
臨床研究でも効果が実証された、科学的根拠のあるうつ病治療です
TMS治療は、世界中で研究が進められており、うつ病治療としての有効性は多数の臨床試験で実証されています。
「TMSって本当に効くの?」
そんな疑問に、科学的なデータに基づいて、わかりやすくお伝えします。
プラセボ(偽刺激)との比較で効果が証明されています
TMS治療が初めての方の中には、「思い込みで良くなっているだけでは?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、実際には本物のTMS治療と、偽のTMS(磁気刺激の出ない装置)を比較する臨床試験が世界中で行われており、その効果は科学的に証明されています。
たとえば、治療抵抗性(抗うつ薬が十分効かない状態)の中等度から重度うつ病の方を対象とした、29件のランダム化比較試験(RCT)をまとめたメタ解析では、
- TMS治療を受けた人の約29%が症状の大幅な改善(反応)を示し、約19%が寛解(=うつ症状がほぼ消失)に至ったという結果が出ています。
- 一方で、偽刺激(プラセボ)を受けた人では、反応率は約10%、寛解率はわずか5%にとどまりました。
つまり、TMSは偽治療(プラセボ)と比べて2~3倍の効果があることが、統計的にも明確に確認されているのです。
抗うつ薬を変えるより、TMSの方が効果的だったという研究もあります
近年では、「薬を変えるよりもTMS治療の方が効果が高い」という研究結果も報告されています。
たとえば、抗うつ薬を2種類以上使っても十分な効果が得られなかった治療抵抗性うつ病の方89名を対象に、「高頻度rTMS治療」と「抗うつ薬の変更または増強療法(※元の抗うつ薬に他の薬を追加する治療法)」を比較した多施設ランダム化比較試験があります。
その結果、TMS治療を受けたグループでは、約37%の方が症状の改善を実感し、約27%の方が寛解(症状がほぼ消失)に至ったのに対し、薬を変更したグループでは、改善がみられた方は約15%、寛解に至った方はわずか約5%にとどまりました。
つまり、TMS治療の方が、薬を変更するよりも明らかに高い改善率・寛解率が得られたことが、信頼性の高い臨床試験によって示されています。
TMSの仕組みと脳への作用メカニズム
電磁誘導による脳刺激
TMSの基本原理はファラデーの電磁誘導の法則です。TMS装置のコイルに高速で電流を流す磁場が発生します。
その変化する磁場が頭蓋骨を通過して脳内誘導電流を誘起します。
この電流がニューロン(神経細胞)の膜電位を変化させ、一定の強度を超えるとニューロンが興奮(発火)します。
電極を直接埋め込まなくても磁場を媒介として脳に電気刺激を加えられる点がTMSの特徴です。
神経可塑性と長期増強(LTP)・長期抑圧(LTD)
繰り返し脳を刺激すると、一時的な興奮だけでなく神経可塑性と呼ばれる神経回路の長期的な変化が起こります。
これは脳の学習や記憶の基盤となる現象です。
TMSによる反復刺激は、この神経可塑性を誘導しうることが知られています。
高頻度の刺激はシナプスの結合を強める長期増強(LTP:Long-Term Potentiation)を引き起こし、低頻度の刺激は逆にシナプス結合を弱める長期抑圧(LTD:Long-Term Depression)を引き起こすと考えられています。
長期増強(LTP)によってシナプス伝達効率が上がると神経ネットワークの活動が持続的に高まり、逆に長期抑圧(LTD)ではシナプス伝達効率低下によって活動が持続的に下がります。
刺激頻度による興奮と抑制
上記の原理に対応して、TMSの治療効果は刺激の頻度によって大きく異なります。
一般に1秒あたり1Hz未満の低頻度rTMS(repetitive TMS)は標的部位の神経活動を抑制し、5Hz以上の高頻度rTMSは神経の興奮性を高めることが明らかにされています。
このように低頻度刺激は抑制的、 高頻度刺激は興奮的な効果をもたらし、脳機能を双方向に調節できる点がTMS治療のポイントです。
脳活動が低下している疾患では、高頻度TMSによって脳機能の活性化を図ります。
逆に、過剰な興奮が問題となる疾患では、低頻度TMSによって神経活動を抑制することが目的となります。
言い換えると、高頻度TMSは興奮性の神経可塑性(LTP様変化)を、低頻度TMSは抑制的な可塑性(LTD様変化)を誘導するため、病態に応じた刺激方法の選択が重要となります。
以上のようなメカニズムにより、TMS治療後には数週間から数か月にわたり効果が持続することがあります。
これはTMSが一時的な脳刺激に留まらず、シナプス可塑性を介して神経回路そのものを再構築し、脳のネットワーク活動に長期的変化をもたらすためと考えられています。
TMSは、単なる一時的な刺激にとどまらず、脳のネットワーク全体に長期的な変化をもたらす治療です。
このように神経回路の働きを電磁的に調整する治療はニューロモジュレーション(神経調節)と呼ばれ、TMSもその一種です。
TMS治療の流れ
初回カウンセリング
当院で初めてTMS治療をご検討される際には、医師によるカウンセリングを保険適用で行います。
現在の症状やこれまでの治療歴を詳しくお伺いし、TMS治療が適しているかどうかを丁寧に判断いたします。
TMS治療は2019年より、一定の条件を満たす場合に限り保険適用が可能となっています。
ご病状や治療経過、ご希望のスケジュールなどにより、保険診療でのTMS治療をおすすめする場合もございます。
その後、TMS治療を開始するかどうかは、患者様が十分にご納得いただいた上で決定していただきます。
当院ではTMS治療を自由診療として提供しており、治療方法やスケジュールについては患者様一人ひとりに最適なプランをご提案いたします。
また、既存の薬物療法と併用してTMS治療を行うことも可能です。
安心して治療に臨んでいただけるよう、一緒に最善の治療法を考えてまいりますので、どうぞご安心ください。
治療前の準備
実際にTMS治療を行う日は、まずリクライニングチェアに座っていただき、リラックスできる体勢を整えます。
その後、頭部に位置決め用のキャップをかぶり、刺激ポイントを正確に測定する準備を行います。
当院では、デンマークのMagVenture社製TMS装置「MagPro(マグプロ)」を使用しています。
MagPro(マグプロ)は世界中の医療機関で導入されている信頼性の高い装置で、日本国内でも広く活用されています。
特にこの機器は、標準的なTMS治療に加えて、短時間で治療が完了する「シータバースト刺激(TBS:Theta Burst Stimulation)」にも対応しており、症状やご都合に合わせた柔軟な治療設計が可能です。
治療中は、磁気コイルから「カチカチ」といった音が断続的に鳴ります。
この磁気刺激音は比較的大きいため、当院では耳への負担を軽減するための耳栓をご用意しております。
必要に応じて使用いただけますので、音が気になる方も安心して治療を受けていただけます。
刺激部位の決定(※初回のみ)
刺激部位の決定には「正確さ」が重要です──当院はBeamF3法を採用しています
TMS治療では、磁気刺激を与える脳の正確な部位を見つけることが非常に重要です。
例えばうつ病治療では、背外側前頭前野(DLPFC:dorsolateral prefrontal cortex)という脳の領域を刺激することで症状の改善を図ります。
この背外側前頭前野(DLPFC)はおおまかな位置は共通していますが、人それぞれ頭の大きさや形が違うため、刺激のポイントを正しく見つけることが治療効果に直結します。
当院では、初回治療時に頭部の複数の位置を計測した上で、科学的根拠に基づいたBeamF3法という計算法を用いて、個々に適した刺激部位を設定しています。
これは、従来広く用いられてきた「頭の決まった位置から5cm測って刺激する」という簡易的な方法(5cm法)とは異なり、個人差を考慮したより正確なアプローチです。
こうした正確な刺激位置の決定により、より安定した治療効果が期待されます。
TMS治療ではどこにどのように刺激を当てるかは非常に大切な要素です。当院ではこの部分にもこだわりをもって対応しております。
刺激強度の決定(※初回のみ)
TMS治療では、刺激をあてる部位が決まったら、次に「どのくらいの強さで刺激するか(=刺激強度)」を決めます。
この強さが強すぎると副作用が出やすくなり、弱すぎると効果が出にくくなるため、その方に合ったちょうど良い刺激の強さを見つけることがとても大切です。
まずは「運動野」で反応をチェックします
刺激強度を決めるために、最初に「運動野」と呼ばれる脳の部位に磁気刺激をあてて、体の反応を確認するテストを行います。
運動野は、体を動かすための指令を出す場所で、手や親指の動きと深く関わっています。
TMS用のコイルを頭に軽くあてて、磁気の強さを少しずつ上げながら刺激をしていくと、あるタイミングで親指がピクッと動くことがあります。
この反応が10回中5回くらいの頻度で見られる刺激の強さが、その方の「運動閾値(RMT:Resting Motor Threshold)」と呼ばれる基準になります。
筋肉の反応を機械で正確に測ることも
親指の動きを目で見て確認する方法のほかに、筋肉の反応をセンサー(筋電図)で測定する方法もあります。
この方法では、筋肉のわずかな反応もグラフとして記録されるため、より正確な判定が可能です。
このとき記録される筋肉の電気的な反応を「運動誘発電位(MEP:motor evoked potential)」と呼びます。
50μV以上の反応が10回中5回確認できた刺激の強さが、運動閾値(RMT)として定義されます。
実際の治療では、RMTより少し強めに
このようにして決めた運動閾値(RMT)をもとに、実際の治療では少し強めの刺激をあてていきます。
たとえばうつ病の治療でよく刺激する「背外側前頭前野(DLPFC)」という部位では、RMTの120%程度の強さで刺激を行うのが一般的です。
このように、TMS治療では科学的な根拠に基づいて、その人に合った最適な刺激の強さを丁寧に測定し、安全で効果的な治療を行っています。
初回のこの評価は、治療の大切な一歩です。
治療の実施(1回のセッション)
いよいよTMS治療のセッションが始まります。リクライニングチェアに座り、できるだけリラックスした姿勢でお過ごしください。
事前に決定した刺激部位にTMSのコイルをあて、位置がずれないように軽く固定します。
治療中は、頭部にコツコツと軽く叩かれるような感覚があり、「タン、タン…」という音が断続的に聞こえます。
これはTMS特有の磁気パルスによるものです。
電気が直接流れるわけではないため、電気刺激のようなビリビリとした痛みはありません。
ただし、頭皮の表面で軽い振動や筋肉がピクピク動くような感覚を覚えることがあります。
これは正常な反応ですのでご安心ください。
TMS治療の1回あたりの施術時間は、使用する刺激方法(プロトコル)によって異なります。
保険診療で採用されている標準的な高頻度rTMS(10Hz)では、1セッションの施術時間は約37.5分です。
一方、自由診療で提供しているシータバースト刺激(TBS:Theta Burst Stimulation)は、近年開発された短時間プロトコルで、1回あたりの施術時間は約3分と、従来法と比べて大幅に短縮できます。
シータバースト刺激(TBS)の種類と作用
当院で採用しているシータバースト刺激(TBS)には、刺激の仕方により次の2種類があります。
iTBS(intermittent TBS)
脳を活性化させる刺激方法です。施術時間は約3分です。
iTBSは、世界的な臨床研究において従来のrTMSと同等の有効性が確認されており、短時間で治療を行える点が特長です。
cTBS(continuous TBS)
脳の過剰な活動を抑える刺激方法です。施術時間は約40秒です。
うつ病に対してはiTBSと組み合わせて実施されることがあり、強迫性障害など脳の過活動が関係する症状にも用いられます。
シータバースト刺激(TBS)は、「忙しくて治療時間を短く済ませたい方」や、「短時間でエビデンスに基づいた治療を受けたい方」にも適しています。
治療後の過ごし方
磁気刺激のセッションが終了したら、その日の治療はすべて完了です。
TMS治療では全身麻酔や鎮静剤を使用しないため、治療直後から普段通りの生活を送っていただけます。
運転や入浴、軽い飲酒なども基本的には可能ですが、まれに頭の重さや倦怠感を感じる方もいるため、体調に応じて無理のない範囲でお過ごしください。
一部の方は、終了直後に頭皮の軽い痛みやこめかみ周辺の筋肉のだるさを感じることがありますが、いずれも一時的なもので、治療回数を重ねるごとに軽減していく傾向があります。
必要に応じて市販の頭痛薬を使用していただくことも可能です。
また、ごくまれに頭痛や不快感が生じる場合がありますが、その際はスタッフが速やかに対応いたしますので、遠慮なくお申し出ください。
TMS治療の通院スケジュールについて(保険診療と自由診療の違い)
保険診療の場合:入院前提の集中的スケジュール
日本の保険診療でTMS治療を受けるには、治療対象や施設基準など厳しい条件が設けられています。
基本的には入院による集中的な治療が前提とされており、スケジュールは以下の通りです。
- 1日1回、約37.5分のTMSセッション
- 週5回(平日毎日)× 約4~6週間
- 合計20~30回の連続施行
※制度上は外来での実施も認められていますが、実際に外来で保険適用のTMS治療を行っている医療機関は非常に限られています。
自由診療の場合:通院頻度を柔軟に調整可能
一方、当院で行っているような自由診療によるTMS治療では、以下のように柔軟なスケジュール調整が可能です。
- 最低週2回から治療を開始できます
- 通院のペースや期間は、お一人おひとりの生活やご都合に合わせて調整できます
実際に、週2回の通院ペースでも十分な効果が得られることが、信頼性の高い医学論文で確認されています。
ある研究では、うつ病患者を対象に「週2回ペース」と「週5回ペース」のTMS治療を比較し、最終的な症状の改善効果にほとんど差がなかったと報告されました。
これは、毎日通院が難しい方でも無理のないペースで効果的な治療が受けられることを意味しています。
短期集中プログラム(Accelerated TMS)で通院日数を短縮できます
当院では、遠方からお越しの方や、できるだけ早く症状の改善を目指したい方のために、1日に複数回TMS治療を行う「短期集中プログラム(Accelerated TMS)」をご用意しています。
「Accelerated」とは、「加速する」「速くなる」といった意味の言葉で、Accelerated TMSは、短期間に集中して治療を行うことで、通院回数を減らし、効果の早期発現を目指す治療法です。
たとえば、1日2回の治療を継続することで、通常の約半分の通院日数で治療を完了できる場合もあります。
治療と治療の間には十分な休憩時間を設け、安全性に十分配慮したうえで実施しています。
この短期集中型のTMS治療は、アメリカ・スタンフォード大学のSAINT試験という国際的にも注目される研究で高い効果が報告されています。
SAINT試験とは
SAINT(Stanford Accelerated Intelligent Neuromodulation Therapy)試験は、アメリカ・スタンフォード大学が実施した、Accelerated TMS(短期集中型TMS)に関する先駆的な臨床研究です。
この試験では、重度の治療抵抗性うつ病に対して、1日10回のTMS治療を5日間連続で行うという、極めて集中的なプロトコルが用いられました。
その結果、わずか5日間で約8割の患者が「寛解」(=抑うつ症状がほぼ消失)に至ったという、 世界的にも大きな注目を集める成果が報告されています。
この研究が示した重要なポイントは以下の通りです
- 使用された刺激形式は、シータバースト刺激(iTBS)という短時間プロトコルです。iTBSは、1回あたりの治療時間が短いにもかかわらず、従来のプロトコルと同等の効果があることが示されています。iTBSは日本では現在、自由診療においてのみ実施されています。
- Accelerated TMS(=1日に複数回TMSを行う短期集中治療)であっても、重大な副作用は報告されておらず、一時的な頭痛や疲労感などの軽度な症状にとどまりました。
- 短期間に集中的にTMS治療を行うことで、より迅速かつ高い改善効果が得られる可能性があることを示し、Accelerated TMSの有効性を裏付けるエビデンスとなっています。
当院で提供しているAccelerated TMSも、このような国際的な研究成果を参考にしながら、 安全性と有効性の両立に配慮して設計された短期集中型の治療プランです。
通院の負担を減らしたい方や、早期の改善を希望される方にとって、有力な選択肢のひとつです。
TMS治療は何回で効果が出る?改善を感じるまでの通院回数と期間の目安
「TMS治療を始めて、何回目くらいから効果が出るの?」
これは多くの患者さんが最も気になるポイントの一つです。ここでは、これまでの臨床研究や大規模な治験データをもとに、TMS治療の効果が現れるまでの期間とその週ごとの変化の傾向についてわかりやすく解説します。
治療効果はいつから現れる?
うつ病に対するTMS治療の効果は、2~4週間程度の治療継続によって現れ始めるケースが多いとされています。しかし、患者さんによってはもっと早く効果を感じる場合もあります。
アメリカ・UCLAの研究では、治療を始めて1週間以内に多くの患者さんが「少し良くなってきた」と感じ始めたことが報告されています。
また、カナダの大規模臨床試験(THREE-D試験)のデータ解析でも、治療初週に急速な改善を示す「早期改善型」の患者さんが全体の約19%を占めていたと報告されています。
うつ病に対するTMS治療:週ごとの改善傾向(目安)
以下は、週ごとの変化の傾向を、主な研究結果にもとづいてまとめたものです。
| 週数 | 治療回数 | 主な変化 | 改善の傾向(目安) |
| 1週目 | 1~5回目 | 軽度の変化が始まる | 全体の15~20%の方が「少し楽になった」と感じる ※まだ大きな変化は少ない |
| 2週目 | 6~10回目 | 症状の改善が、数値やチェック項目にも現れ始める | 医師の問診でも明らかに良くなってきていると評価される時期 |
| 3週目 | 11~15回目 | “良くなってきた”という実感を持つ方が増え始める段階 | 約20%の方に症状の半分以上の改善が現れ始める時期 |
| 4週目 | 16~20回目 | はっきりと“効いてきた”と感じる人が増える時期 | 約20~30%の方が症状の半分以上の改善を示し、さらに約10%では寛解(症状の消失)が確認される時期 |
※効果には個人差があり、これより早く改善を感じる方もいれば、もう少し時間がかかる方もいます。
改善のスピードには個人差があります
うつ病に対するTMS治療では、症状の改善の仕方に大きく3つのタイプがあるとされています。
| 分類名 | 内容 | 割合 |
| 急速改善群(Rapid responders) | 治療初週(1週目/1~5回目)で急激に症状が改善 | 約19% |
| 線形改善群(Linear responders) | 治療期間中(4〜6週/20~30回)を通して徐々に症状が改善 | 約70% |
| 非反応群(Non-responders) | 治療終了時点(6週/~30回)でも症状の改善が乏しい | 約11% |
この分類は、カナダのTHREE-D試験での詳細解析によるもので、治療法の種類(高頻度rTMS・シータバースト刺激など)に関係なく見られた傾向です。
TMS治療の効果の現れ方は人それぞれ、焦らず続けることが大切です
TMS治療による改善の現れ方には個人差があります。
治療を始めてすぐに「少し楽になった」と感じる方もいれば、20~30回かけて徐々に効果を実感される方が多いのが現実です。
中には、治療初期にはあまり変化を感じられなくても、回数を重ねるうちにゆっくりと症状が軽くなっていく方も少なくありません。
ご自身のペースで焦らず、少なくとも20~30回前後を目安に継続することが、効果を引き出すためにとても重要です。
ご自身のペースで、無理のない治療を
TMS治療は、日常生活を送りながら受けられる、身体への負担が少ない非侵襲的な治療法です。
当院では、TMS治療を自由診療で提供しているため、入院の必要がなく、ご自身のペースに合わせた通院治療が可能です。
症状や生活スタイルに応じて、通院頻度・治療期間・短期集中型プログラムなど、柔軟にご提案いたします。
まずはご相談だけでも構いません。無理のない形で治療を始めていただけるよう、一人ひとりに合わせた最適なプランをご提案し、安心して治療に取り組んでいただけるようサポートいたします。
TMS治療の副作用は?頻度・安全性・注意点をわかりやすく解説
身体への負担が少ない治療ですが、ごく一部に軽度の副作用が生じることがあります。
TMS(経頭蓋磁気刺激)治療は、脳の外から磁気刺激をあてる非侵襲的な治療法であり、全身麻酔や薬剤を用いないことから、身体への負担が少なく、安全性の高い治療法とされています。
とはいえ、医療行為である以上、副作用がまったくないわけではありません。
ここでは、rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)に基づくTMS治療で報告されている主な副作用とその頻度をご紹介します。
主な副作用と発生頻度(rTMSベース)
頭皮の痛み・刺激部位の不快感(約30%)
治療中にコイルが当たる頭部に、ピリピリとした軽い痛みや圧迫感を感じることがあります。
通常は一時的なもので、刺激に慣れることで自然に軽減します。
顔まわりの筋肉の収縮や違和感(約30%)
磁気刺激の影響で、目の周囲や顔面の筋肉が一時的に動くことがあります。
これも治療中のみで、多くは軽度です。
頭痛(10%未満)
一過性の軽い頭痛が治療後に起こることがありますが、ほとんどは市販の鎮痛薬で対処可能で、数時間以内におさまります。
首や肩のこり・筋肉痛(約10%)
姿勢やコイル位置の影響で、刺激部位の周辺に緊張感やだるさを感じることがあります。
けいれん発作(極めてまれ/0.003%~0.07%)
極めてまれですが、TMSの最も重篤な副作用です。発生率は1セッションあたり約0.003%、患者1人あたり約0.07%と報告されています。
これは抗うつ薬によるけいれん発生率(0.1~0.6%)と同程度かそれ以下です。
報告されたけいれん発作は刺激中または直後に一度起きて自然終息し、繰り返し発生した例や新たにてんかんを発症した例はありません。
躁転・軽躁転(1%未満)
うつ状態の患者にTMSを行った際、ごくまれに躁状態(気分が異常に高揚する状態)に移行することがあります。
事前に双極性障害の有無をしっかり確認することでリスクは低減できます。
聴覚への影響(まれ)
治療中に「カチカチ」という音が続くため、聴覚過敏のある方では耳鳴りや不快感を感じることがあります。
通常は耳栓の着用で予防され、聴覚障害などの長期的な影響は報告されていません。
当院でも耳栓のご用意があります。
その他のごく稀な副作用
めまい、一時的な注意力の低下、皮膚の赤み・熱感などがまれに報告されています。
これらはいずれも一時的かつ軽度であることがほとんどです。
※他のTMSプロトコル(シータバースト刺激、深部TMSなど)も、 副作用の傾向はrTMSと概ね共通しており、安全性が確認されています。
ご不安なことがあれば、事前にお気軽にご相談ください
副作用についてご不安がある方には、医師が丁寧にご説明し、リスクと対策について十分にご理解いただいた上で治療をご提案しています。
初回診察時にしっかりとご質問・ご相談いただけますので、どうぞご安心ください。
TMS治療は保険で受けられる?自由診療との違いを徹底比較
TMS治療を保険診療で受けられる条件とは?
TMS治療は、一定の条件を満たした場合に限り、保険診療で受けることができます。
ただし、その条件は比較的厳しく、実際に保険診療でTMSを受けられる医療機関や患者はごく一部に限られます。
以下に、保険診療でTMSを受けるための主な条件をわかりやすくまとめました。
対象となる病気と症状
- 対象は成人(18歳以上)の中等度うつ病のみです。
- 軽症のうつ病は対象外です。
- うつ病以外の疾患も保険適用外です。
うつ薬での治療歴が必要です
- 治療抵抗性である必要があります。つまり抗うつ薬を十分な量・期間使用しても効果が不十分だった場合に限り、保険適用となります
- ただし、副作用で抗うつ薬を十分な量・期間使用できない場合も保険適用が認められる場合があります。
- うつ病の治療初期の段階から保険診療でのTMS治療は受けられません
入院治療が基本です
- 保険診療でTMS治療を受ける場合、原則として約1.5~2か月間の入院治療が基本となります。
- 制度上は、保険適用のもとで外来通院によるTMS治療も可能とされていますが、実際に外来で保険診療のTMSを提供している医療機関は、全国でもほとんど存在しないのが現状です。
実施できる病院の条件も厳しい
- 精神科を標榜し、20床以上の入院施設を備えた病院であること
- TMSの研修を修了した、5年以上の経験を持つ精神科医が常勤していること
- 認知行動療法(CBT)を提供できる医師が在籍していること
- 精神科救急や急性期医療体制を整えており、厚労省に届け出がなされていること
このように、高度な精神科医療体制を備えた一部の病院のみが保険診療でのTMSを提供できます
保険診療で行えるTMSの内容(プロトコル)
- 1回の治療時間が約37.5分の高頻度rTMS(10Hz)に限られます。
- 短時間プロトコルのシータバースト刺激(TBS)は選択できません。
治療回数とスケジュールの制限
- 原則、週5回の治療を30回(8週間以内)行います。
- 効果判定は3週目・6週目に実施し、改善が見られなければ早期中止、改善すれば早期終了の判断もされます。
- 1クール終了後の再治療を希望する場合には再び一定の条件を満たす必要があります(常に保険適用で繰り返し受けられるわけではありません)
TMS治療:保険診療と自由診療の比較表
| 保険診療(公的医療保険) | 自由診療(自費診療) | |
|---|---|---|
| 対象疾患 | うつ病に限られる | うつ病のほか、強迫性障害・慢性疼痛などにも対応可能 |
| 重症度の制限 | 中等度うつ病が対象(軽症は保険適用外) | 制限なし。軽症うつ病にも対応可 |
| 治療歴の要件 | 抗うつ薬を十分に使用しても効果が不十分な場合(治療抵抗性)に限られる 副作用で抗うつ薬を使用できない場合も保険適用可能な場合があります |
抗うつ薬に頼りたくない方、副作用で悩んでいる方も可能。治療初期から選択可能 |
| 通院形態 | 原則として入院治療(制度上は外来も可だが、実施病院はごく限られる) | 外来治療で実施。通院頻度やスケジュールを柔軟に設定可能 |
| 使用できるプロトコル | 1回約37.5分の高頻度rTMS(10Hz)のみ | rTMSに加えて、iTBS(約3分)など短時間プロトコルの選択も可能 |
| 治療回数・期間 | 最大30回(8週間以内)。3週・6週目に効果判定あり、早期中止の可能性あり | 症状や希望に応じて自由に設計可能 短期集中プログラム(Accelerated TMS)で通院日数を短縮することもできます |
| 費用 | 高額療養費制度により月額自己負担に上限あり(収入や年齢により異なる) | 医療機関ごとに費用設定が異なる。1回ごとの支払いまたはコース制が一般的 |
| 実施医療機関 | 精神科病棟・専門スタッフを備えたごく一部の病院のみ | 多くのTMS専門クリニックで実施可能 |
当院では自由診療でTMS治療を行っています
当院では、18歳以上の方を対象に、TMS治療を自由診療にてご提供しています。
「保険診療の適用条件に当てはまらない」「入院が難しい」「短時間で治療を済ませたい」といったお悩みにも対応できるよう、柔軟な通院スケジュールや短時間プロトコル(iTBS)など、さまざまな治療スタイルをご提案しています。
さらに、1日に複数回の治療を行う短期集中プログラム(Accelerated TMS)も導入しており、「できるだけ早く改善したい」「遠方からの通院回数を減らしたい」といったご希望にもお応えしています。
なお、症状や治療歴によっては、保険診療でのTMS治療が適していると判断される場合もあります。
その際は、制度上の条件やご希望をふまえ、保険診療の選択肢についてもご案内させていただくことがあります。
まずは初回診察にて、現在のお悩みやご希望をお聞かせください。
お一人おひとりにとって、無理なく続けられる最適な治療方法を一緒に考えてまいります。
もちろん、無理に治療をおすすめすることは一切ありません。
どうぞ安心してご相談ください。
TMS治療の料金・通院コースのご案内(自由診療)
| 1回あたり金額(税込) | 合計金額(税込) | |
|---|---|---|
| 初回お試しTMS | 4500円 | 4500円 |
| 1回(都度払い) | 11000円 | 11000円 |
| 5回コース | 10500円 | 52500円 |
| 10回コース | 10000円 | 100000円 |
| 20回コース | 9000円 | 180000円 |
| 30回コース | 8000円 | 240000円 |



