不眠症を改善するには?病院での治療方法と自分でできる対策方法を解説
不眠症の治療方法には病院での薬物療法や精神療法などがありますが、それと同時に生活習慣の改善も重要になります。
自分でできる改善方法もあるため、不眠症にお悩みの方は生活習慣の見直しから始めてみましょう。
この記事では、不眠症の自分でできる改善方法について詳しく解説します。
不眠症の治療方法や症状、主な原因などもまとめているため、不眠症状でお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
不眠症の自分でできる改善方法
不眠症の自分でできる改善方法として、以下が挙げられます。
- 栄養バランスの整った食事を心がける
- 適度に運動する
- 不眠に効果的なツボを押す
- 呼吸法や瞑想を取り入れる
- 入浴・アロマなどでリラックスする
- 睡眠日誌をつける
- 朝起きたら太陽の光を浴びる
- 睡眠環境を整える
- 眠くなるまで寝床に入らない
ここでは上記9つの改善方法についてそれぞれ解説します。
栄養バランスの整った食事を心がける
質の高い睡眠を得るためには、栄養バランスの取れた食事を心がけることが大切です。
特に睡眠ホルモン「メラトニン」の生成に関わる「トリプトファン」を多く含む食品(大豆製品、乳製品、バナナなど)を意識的に摂るとよいでしょう。
またビタミンB群やマグネシウム、カルシウムも神経を安定化させ、リラックスしやすい状態をつくります。
逆にカフェインや刺激物の摂取は交感神経を活性化させて眠りを妨げるため、就寝前の摂取は控えるのが望ましいです。
夕食は就寝2〜3時間前までに済ませ消化に良いものを中心にした食事を心がけると、内臓への負担も軽くなり、自然と眠りに入りやすくなります。
適度に運動する
適度な運動には睡眠の質を高める効果があります。
運動によって体温が一時的に上昇し、その後の自然な体温低下に伴って眠気が促されるため、入眠がスムーズになるのです。
また運動にはストレス解消や自律神経の安定、体内リズムの調整など、さまざまな睡眠改善効果が期待できます。
おすすめはウォーキングやヨガ、軽いストレッチなどの有酸素運動で、夕方から夜の早い時間帯に行うとより効果的です。
ただし激しい運動を寝る直前に行うと、かえって交感神経が刺激されて眠れなくなることがあるため、運動のタイミングと強度には注意が必要です。
不眠に効果的なツボを押す
ツボ押しは、不眠のセルフケアとしても効果的です。
特に「失眠穴」というツボは不眠改善に特化した有名なツボで、足裏のかかと付近に位置します。
寝る前にこの部分を軽く押すことで、副交感神経が優位になり、リラックスしやすくなります。
また手首の内側にある「内関」や耳の後ろにある「安眠」なども、不安感や緊張を和らげる効果が期待できるためおすすめです。
ツボ押しは強く刺激するのではなく、心地よい程度の力でゆっくり行うのがポイントです。
就寝前のルーティンに取り入れると、習慣化しやすくなります。
呼吸法や瞑想を取り入れる
呼吸法や瞑想は、心身の緊張を和らげるリラクゼーション法として、不眠症の改善に効果的です。
特に腹式呼吸は副交感神経を優位にし、心拍や呼吸のリズムを整えて、身体を自然と眠りに導きます。
また瞑想では「今この瞬間」に意識を向けることで、頭の中の雑念や不安から距離を置き、心を静められます。
瞑想にはさまざまな方法があるため、初心者でも取り組みやすい方法から始めると良いでしょう。
寝る前に毎日数分間行うことで、習慣化しやすくなり、自然な眠りを促せます。
入浴・アロマなどでリラックスする
入浴・アロマなどで就寝前に心身をリラックスさせることで、スムーズな入眠につながります。
ぬるめのお湯にゆっくり浸かることで体温が一時的に上昇し、その後自然に体温が下がることで眠気が訪れやすくなります。
さらに入浴によって副交感神経が優位になり、緊張やストレスも和らぐため、不安が強くて眠れない場合に特におすすめです。
またアロマテラピーも効果的で、ラベンダーやカモミールなどの香りは、気持ちを落ち着ける作用があります。
アロマオイルをディフューザーで香らせたり、数滴垂らした湯に浸かったりすると、より深いリラクゼーション効果が得られます。
睡眠日誌をつける
不眠症を改善するためには、自分の睡眠パターンを把握することが重要で、そのために役立つのが「睡眠日誌」です。
睡眠日誌には、就寝時間や入眠までの時間、途中で目が覚めた回数、起床時間、日中の眠気の有無などを記録します。
これにより眠れない原因の傾向や生活習慣との関係を客観的に見ることができます。
また医師に相談する際の資料としても非常に有効です。
記録を続けることで「実はそれほど眠れていないわけではなかった」と気づける場合もあり、不安の軽減にもつながります。
形式にこだわる必要はなく、手帳やスマホのメモアプリなど、続けやすい方法で記録することが大切です。
朝起きたら太陽の光を浴びる
朝起きてすぐに太陽の光を浴びることは、体内時計を整えるのに効果的です。
人間の体内時計は24時間より少し長いため、何もしないと少しずつ後ろにずれていってしまいます。
そのずれをリセットしてくれるのが朝の光です。
太陽光を浴びることで、脳の視交叉上核という部位が刺激され、体内時計が調整されます。
また朝に光を浴びると、セロトニン神経系の活性化が起こり、そのセロトニンが夜間にメラトニンへ変換されて眠気を導きます。
起床後になるべく早くカーテンを開ける、短時間でも屋外で日光を浴びるなどを習慣化してみましょう。
睡眠環境を整える
不眠症を改善するためには、睡眠環境を整えることも大切です。
温度や湿度、光、音などの睡眠環境は、睡眠に大きく影響を及ぼします。
理想的な室温は20度前後、湿度は40~70%が目安とされているため、エアコンや加湿器を上手に活用して調整するとよいでしょう。
また寝室はなるべく暗く、静かで落ち着ける空間にすることが重要で、遮光カーテンを使ったり騒音が気になる場合は耳栓やホワイトノイズを活用したりするのも効果的です。
さらに寝具の硬さや肌触り、パジャマの素材なども、自分に合ったものを選び、快適な睡眠環境を整えましょう。
眠くなるまで寝床に入らない
「とりあえず布団に入っていれば眠れるだろう」と思って早めに就寝する人もいますが、実はこれは逆効果になることがあります。
眠くないのに無理に寝ようとすると、かえって緊張や焦りが強まり、脳が「布団=眠れない場所」と認識してしまうこともあります。
この悪循環を防ぐためには、強い眠気を感じてから布団に入るようにすることが大切です。
眠れない時間が長く続くようであれば、一度布団から出て、暗めの部屋で静かな音楽を聴いたり軽くストレッチをしたりしてリラックスしてみましょう。
再び眠気が訪れたタイミングで布団に戻ることで、自然な入眠が促されやすくなります。
不眠症の治療方法
不眠症の治療方法は主に以下の2つです。
- 薬物療法
- 精神療法
ここでは上記2つの治療方法についてそれぞれ解説します。
薬物療法
不眠症の薬物療法で使用される睡眠薬は主に以下の3種類です。
睡眠薬の種類 | 具体的な作用 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
GABA受容体作動薬 | 脳の興奮を抑える神経伝達物質GABAの働きを促し、催眠作用を発揮する | 不安症状も改善されることがある。短時間で効果を実感しやすい | 依存性がある。連用で耐性ができることがある。 |
メラトニン受容体作動薬 | メラトニン受容体に作用し、体内時計を整えて自然な眠気を促す。 | 入眠困難や概日リズム睡眠・覚醒障害に効果的で、依存性がない | 効果が現れるまでに2週間程度時間がかかる |
オレキシン受容体拮抗薬 | 覚醒を維持する神経伝達物質オレキシンの働きを弱め、自然な睡眠を促す | 即効性があり、依存性がない | 悪夢を見ることがある |
精神療法
不眠症の治療では、精神療法が用いられることがあります。
不眠症の患者さんの中には、眠れないことに対する恐怖や不安、自己否定的な思考を抱えている方が少なくありません。
このような思考は不眠症状を悪化させる原因となるため、認知行動療法などの精神療法により考え方を改善することが大切です。
精神療法を行うことで柔軟性のある考え方に捉え直せるように矯正し、眠りにつくときの不安や緊張をほぐせます。
不眠症とは
不眠症とは、「寝つけない」「眠りが浅い」「途中で何度も目が覚める」「早朝に目が覚めてしまう」といった状態が続き、日中の活動や生活の質に支障をきたす睡眠障害の一つです。
単に寝不足というだけではなく、眠れないことで疲れが取れず、集中力の低下や身体的不調を引き起こすこともあります。
不眠症は一時的なものから慢性的なものまで幅広く、人によって原因や症状も異なります。
ここでは不眠症の主な症状や診断基準、4つのタイプなどについて解説しましょう。
不眠症の主な症状
不眠症の主な症状として、以下が挙げられます。
- 寝つきが悪い
- 夜中に何度も目が覚める
- 早朝に目覚め、再び眠れない
- 熟睡感がない
- 悪夢をよく見る
- 日中に眠気や倦怠感を感じる
- 集中力が続かない
- イライラしやすくなる
- 食欲不振
など
寝つきが悪くなったり夜中に何度も目覚めてしまったりするだけでなく、睡眠の質が低下することにより、日中に疲労感や倦怠感、集中力の低下、食欲不振といった身体症状が現れる場合もあります。
不眠症の診断基準
不眠症の診断基準は以下の2点です。
- 夜間の不眠が続いている
- 日中に精神や身体の不調があり、生活に支障をきたしている
不眠症は慢性不眠症と短期不眠症の2種類に分けられ、症状が続いている期間が3か月以上の場合は慢性不眠症、3か月未満の場合は短期不眠症と診断されます。
実際の診断では、国際的な診断基準である『睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)』が用いられる場合が多いです。
この診断基準では以下のとおり定められています。
- 睡眠の質に対する訴えがある
- 適切な睡眠環境下であってもその訴えがある
- 以下の日中の機能障害が一つでも認められる
倦怠感・不定愁訴、集中力・注意・記憶の障害、社会的機能の低下、気分障害や焦燥感、日中の眠気、動悸・意欲障害、仕事中や運転中のミス、睡眠不足に伴う緊張・頭痛・消化器症状、睡眠に関する不安
また不眠症の検査では、問診のほか、血液検査や終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)などで症状を評価する場合があります。
不眠症は4つのタイプに分けられる
不眠症は「入眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」「熟眠障害」の4つのタイプに分けられます。
- 入眠障害:寝つくまでに30分~1時間以上の時間がかかるタイプで、不安や緊張が原因であることが多い
- 中途覚醒:眠っている間に何度も目が覚めてしまうタイプで、加齢やうつ病、身体的な不調が関係することがある
- 早朝覚醒:予定よりかなり早く目覚めてその後眠れなくなるタイプで、うつ病などに多くみられる
- 熟眠障害:睡眠時間が確保できていても、眠りが浅く疲れが取れないと感じるタイプ
これらのタイプは単独で現れることもあれば、複数のタイプが重なる場合もあります。
不眠症の主な原因
不眠症の主な原因として、以下の5つが挙げられます。
- 心理的要因
- 身体的要因
- 精神疾患
- 生活習慣の乱れ
- アルコールや薬剤の影響
ここでは上記5つの原因についてそれぞれ解説します。
心理的要因
不眠の中でも特に多いのが、ストレスや緊張、不安などの心理的要因によるものです。
仕事や人間関係、将来への不安などが頭を離れず、寝床に入っても考えが止まらない状態が続くと、眠りにつきにくくなります。
このような状態が慢性化すると、さらに眠れないことへの焦りや不安が加わり、不眠が悪化してしまうこともあります。
身体的要因
身体の不調や病気も、不眠の原因となることがあります。
例えば喘息やアトピー性皮膚炎によるかゆみ、腰痛、頻尿、睡眠時無呼吸症候群などは、夜間に目が覚める原因となり、熟睡感が得られません。
また更年期障害に伴うホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)や心拍数の上昇なども、睡眠に影響を及ぼすことがあります。
精神疾患
うつ病や不安障害、双極性障害、統合失調症などの精神疾患は、不眠と深い関係があります。
特にうつ病では、早朝に目覚めてその後眠れなくなる「早朝覚醒」が起こりやすいです。
不安障害では、常に不安がつきまとい、心が落ち着かないため眠れなくなります。
精神疾患と不眠は相互に影響し合うため、どちらも適切な治療が必要です。
生活習慣の乱れ
夜更かしや不規則な食事、日中の過度な昼寝、スマートフォンやパソコンの長時間使用など、生活リズムの乱れも不眠を引き起こします。
特に就寝前に強い光を浴びると、体内時計が乱れ、メラトニンの分泌が抑制されて入眠しにくくなります。
生活習慣の乱れを改善し、規則正しい生活を心がけることが大切です。
アルコールや薬剤の影響
不眠症の原因の一つとして、アルコールや薬物の影響が挙げられます。
一時的に寝つきを良くするために寝酒をする人もいますが、実はアルコールは眠りを浅くし、夜中に目覚めやすくなるため逆効果です。
またカフェインや一部の薬剤も睡眠の質に悪影響を及ぼします。処方薬を使用してから不眠が始まった場合は主治医と相談することが大切です。
まとめ
不眠症を改善するためには、食事や運動のほか、不眠に効果的なツボを押したり呼吸法や瞑想を取り入れたり、睡眠日誌をつけたりする方法が効果的です。
今回解説した内容を試しても改善されない場合、早めに医療機関を受診しましょう。
薬物療法や精神療法といった専門的な治療を受けることで、不眠症を改善できます。
『金山こころとねむりのクリニック』では、不眠症の治療を行っています。また薬剤を使用する場合は最小限に抑えるように心がけております。
患者さん一人ひとりに合わせた治療を行っているため、不眠症状でお悩みの方は気軽にご相談ください。