TMS治療はうつ病を改善に導く治療方法!効果・メリット・向いている人の特徴を解説
うつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下が長期間続き、仕事や人間関係など日常生活に大きな支障をもたらす心の病気です。
薬物療法や精神療法によって多くの方が改善しますが、治療が思うように進まない『治療抵抗性うつ病』に悩む方もいます。
こうしたケースに対して近年注目されているのが、磁気刺激を用いて脳の働きを整える『TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)』です。
この記事では、TMS治療の基本から効果、他の治療法との違いやメリット、TMSが向いているタイプまで、やさしく丁寧に解説します。
うつ病治療の新たな選択肢としてTMSを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
うつ病とは
うつ病は、気分が一日中落ち込み何をしても楽しめないといった精神面の症状と、眠れない・食欲がない・疲れやすいなどの身体面の症状が続き、日常生活に大きな支障が生じている状態を指す精神疾患です。
一時的な気分の落ち込みとは異なり、この状態がほぼ毎日、少なくとも2週間以上続くことが診断基準の一つになっています。
心の症状だけでなく睡眠障害や食欲不振、倦怠感など身体の不調も現れるのが特徴で、症状が重くなると「死んでしまいたいほどつらい」という深刻な思考に至ることもあります。
ここでは、うつ病の代表的な症状・原因・主な治療方法について解説します。
うつ病の症状
うつ病の症状は大きく精神面と身体面に分けられます。
精神面の症状として、持続的な憂うつ気分、意欲や興味の喪失、集中力の低下、自責感や無価値感などが挙げられます。
例えば、今まで楽しめていた趣味に興味が持てなくなったり、何もする気が起きなくなったりします。また決断力が鈍り、物事を悲観的・否定的に考えがちになり、自分を過度に責めてしまうこともあります。
身体面では、睡眠障害(寝つけない・途中で何度も目が覚める・朝早く目覚めてしまう)、食欲の減退または過食、慢性的な疲労感などが現れます。
これらの症状が積み重なることで仕事や家事が手につかなくなり、人間関係にも支障が出てきます。うつ病の症状や程度には個人差がありますが、調子が悪い状態が2週間以上続く場合は早めに専門医に相談することが大切です。
うつ病の原因
うつ病の原因は一つに限られず、さまざまな要素が複雑に関係し合って発症すると考えられています。
遺伝的な体質や性格的な傾向が「なりやすさ(素因)」として背景にある一方で、長期間にわたる強いストレスや、仕事や人間関係などによる生活上の困難といった環境要因が「引き金」となって発症に至るケースが多いとされます。
加えて、糖尿病やがんなどの慢性疾患、妊娠・出産・更年期といったホルモン変化も発症リスクを高める要因です。
こうした身体的・心理的・社会的な要因が脳の働きに影響を与え、セロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の働きが乱れることで、感情や意欲、睡眠、集中力といった機能に支障が出ると考えられています。
かつては「心の弱さ」と誤解されていたうつ病ですが、現在では「脳の病気」として理解が進んでおり、医学的な治療が必要な疾患です。
うつ病の主な治療方法
うつ病の治療は、休養・環境調整・薬物療法・精神療法の4つが柱です。まずは十分な休息をとり、職場や学校を含めストレスとなる環境から距離を置くことが大切です。
必要に応じて抗うつ薬による薬物療法が行われます。
これらの薬は脳内の神経伝達物質の働きを整え、気分や意欲の改善を目指すものですが、効果が現れるまでには一定の時間がかかります。そのため、医師の指示のもと数週間〜数ヶ月かけて継続することが重要です。
効果が十分でない場合は薬の種類や量を調整し、副作用に配慮しながら治療が進められます。
また、認知行動療法や対人関係療法などの精神療法(対話形式で行われる心理的な治療)を併用することで、ストレスへの対処法を身につけ、再発の予防にもつながります。
比較的軽度なうつ病の場合には、散歩などの軽い運動も症状の改善に有効とされています。
症状の程度によっては、電気けいれん療法(ECT)や近年注目されているTMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)などの選択肢もあります。
特にTMS治療は、薬物療法で効果が得られなかった方や副作用が強くて治療を続けにくかった方に対して有効性が期待され、2019年には日本でも治療抵抗性うつ病に対して保険適用が認められました。
このように、うつ病の治療は人によって最適な方法が異なるため、医師と相談しながら自分に合った治療を見つけることが大切です。
うつ病にはTMS治療が効果的
うつ病の治療には薬物療法や精神療法などさまざまな方法がありますが、近年注目されているのが『TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)』です。
磁気を使って脳の活動を直接刺激することで、気分や意欲に関係する神経の働きを整えていきます。
副作用が少なく安全性が高いとされ、薬の効果が不十分な方や副作用で薬を続けられない方にも選択肢となる治療方法です。
ここではTMS治療の特徴について解説します。
TMS治療とは
うつ病治療の中でも、近年注目を集めているのが「TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)」です。TMS治療は磁気の力で脳の特定部位を刺激し、気分や意欲に関わる神経回路の働きを整える治療法です。
抗うつ薬のように体全体に薬剤を巡らせるのではなく、頭皮上に置いたコイルから発生する磁気によって脳内に微弱な電流を誘導し、神経細胞の活動を調整します。
特にうつ病患者で機能低下がみられる前頭前野(感情や意欲の調節に関与する部位)を直接刺激できる点が特徴です。
さらに、電気けいれん療法(ECT)のように全身麻酔を用いないため、身体への負担が少なく日常生活に支障をきたしにくいとされています。
薬物療法で効果が不十分な方や、副作用のため薬を続けられない方でも受けられる可能性があり、世界的にも治療抵抗性うつ病に対する有効な治療法として認められています。
TMS治療の効果とは?うつ病に対する改善率と寛解率
TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)は、薬が効きにくいうつ病の新たな選択肢として注目されています。
近年の研究では、TMS治療だけで約50〜60%の患者が症状の改善(うつ症状が半分以上軽くなる)を実感しており、約30%の人が「寛解(かんかい)」=症状がほぼ消える状態に至ったと報告されています。
これは従来の抗うつ薬に劣らない治療効果であり、副作用が少ない点も大きなメリットです。さらに、ある国際的なレビューでは、現実の診療現場に近い条件で最大約80%の人に改善が見られ、半数以上が寛解したとするデータもあります。
TMS治療は、こうした数多くの臨床研究によって効果が裏付けられた科学的根拠のある治療法です。特に、薬の効果が十分でないケースでも前向きな変化が期待できる選択肢として、近年広く注目されています。
治療抵抗性うつ病(TRD)とは?薬が効かないケースに要注意
抗うつ薬による治療で改善する患者さんも多いですが、中には「十分な量と期間で少なくとも2種類の抗うつ薬を試しても効果が見られない」ケースがあります。
これが「治療抵抗性うつ病(TRD)」と呼ばれる状態で、うつ病患者の約5〜20%にみられます。難治性のうつ病であり、生活機能の低下や自殺リスクの増加など深刻な問題を伴います。
従来、治療抵抗性うつ病(TRD)に対して最も効果的とされてきたのは「電気けいれん療法(ECT)」でしたが、全身麻酔が必要で、記憶障害などの副作用もあるため、実際に受ける人はごく少数にとどまっています。
こうした背景から、薬物療法とECTの中間に位置する、新たな非侵襲的な(体を傷つけない)治療法として「TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)」が近年注目を集めています。
TMS治療は治療抵抗性うつ病(TRD)にも有効な選択肢
ある大規模な臨床研究では、抗うつ薬に反応しなかった患者にTMSを行った結果、約40%がうつ症状の半減(反応)、約36%がほぼ症状消失(寛解)を達成したと報告されています。
これは偽刺激(プラセボ)と比べて約3倍の効果であり、TMSの有効性が科学的に証明された代表的なエビデンスです。
さらに実際の診療現場でも、治療抵抗性うつ病(TRD)の患者を対象とした報告では、TMS治療を終えた患者の半数以上で症状改善がみられ、約3人に1人は寛解したという報告もあります。
特に、両側のDLPFC(背外側前頭前野)に対してTMS治療を実施(左DLPFCに高頻度刺激・右DLPFCに低頻度刺激)する手法は、従来よりも高い効果が期待できる可能性のあるアプローチとして注目されています。
米国では2008年にTMSがFDA(食品医薬品局)により治療抵抗性うつ病(TRD)の治療として正式に承認され、英国のNICE(国立医療技術評価機構)など各国の医療機関でもガイドラインに組み込まれています。
近年では「薬を増やし続けるよりも、TMSを早期に導入した方が寛解に至る確率が高い」とする研究もあり、TMSは実用的かつ信頼性の高い治療法として確立されつつあります。
副作用が少なく、高い改善率が期待できるTMS治療は、従来の治療で十分な効果が得られなかった方にとって、科学的根拠に基づいた新たな選択肢といえるでしょう。
Accelerated TMS治療とは?SAINTプロトコルが示す短期集中治療の高い有効性
うつ病に対する治療法として近年注目されているのがAccelerated TMS(aTMS)、短期集中型TMS治療です。
「Accelerated」とは、「加速する」「速くなる」ことを意味します。通常1日1回で行われる治療を、Accelerated TMSでは1日複数回行い、治療期間を大幅に短縮させます。これにより、早期の症状改善を目指します。
メタアナリシスによると、Accelerated TMSの効果は治療開始から1週で約33%、4週までに約43%の患者が症状改善を示しており、従来のTMSと同等の有効性が認められています。
また、1日複数回のセッションを実施することで、さらなる効果の向上も期待されています。
Accelerated TMSの中でも注目されているのが、スタンフォード大学が開発した「SAINT(Stanford Accelerated Intelligent Neuromodulation Therapy)」というプロトコルです。
これは左DLPFC(背外側前頭前野)をターゲットに、1日10回のiTBS(intermittent Theta Burst Stimulation/間欠的シータバースト刺激)を5日間連続で行う超短期集中型治療で、合計で50セッションを実施します。
治療抵抗性うつ病(TRD)を対象とした試験では、5日間で約90%の患者が寛解を達成。さらに、二重盲検ランダム化比較試験でも、治療群の寛解率は約80%と、偽刺激群(約13%)を大きく上回る有効性が確認されています。
副作用は軽度な倦怠感や頭痛にとどまり、速効性と安全性を兼ね備えた先進的治療法として世界的に注目されています。
短期間に集中的にTMS治療を行うことで、より迅速かつ高い改善効果が得られる可能性が示されており、Accelerated TMSは科学的エビデンスに裏付けられた次世代のうつ病治療の選択肢として期待されています。
うつ病にTMS治療を行うメリット
うつ病にTMS治療を行うメリットとして、以下の6つが挙げられます。
- 薬に頼らず治療できる
- 薬やカウンセリングと併用すると相乗効果が期待できる
- 副作用が少ない非薬物療法
- 麻酔・手術・ダウンタイムなし。TMSは日常生活に支障が出にくい治療法
- 治療期間が短く、効果の現れも早い
- メンテナンスTMSで再発予防も期待できる
ここでは上記6つのメリットについてそれぞれ解説します。
薬に頼らず治療できる
TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)は、抗うつ薬を使わずに脳の神経回路に直接働きかける非薬物療法です。
磁気によって脳の背外側前頭前野(DLPFC)を刺激し、気分や意欲に関わる脳活動を正常化させることで、うつ症状の改善をめざします。
この治療法は「体に薬を入れたくない」「副作用がつらくて薬を続けられなかった」といった理由で、薬物療法に抵抗を感じている方にとって、有力な代替手段となります。
「薬を使わない」という安心感から治療に前向きになれる方も多く、心身への負担を抑えながら、より自分らしい形でうつ病と向き合うことができます。
薬やカウンセリングと併用すると相乗効果が期待できる
「TMS(経頭蓋磁気刺激)は、薬やカウンセリングと一緒に使えるの?」と疑問を持つ方も多いかもしれません。
結論から言えば、TMSは薬物療法や心理療法と併用可能で、むしろ併用による相乗効果が期待される治療法です。
TMSは、脳内の神経回路に磁気刺激を与えることで神経活動を調整します。
これは、抗うつ薬が脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)のバランスを整える作用や、認知行動療法(CBT)を含むカウンセリングが認知や行動のパターンを修正する仕組みとは異なる作用機序です。そのため干渉することなく、これらと並行して治療を行うことが可能です。
このように、TMSは単独でも効果が期待されますが、薬や心理療法と組み合わせることで治療の選択肢が広がり、特に治療抵抗性うつ病(TRD)など難治性のケースに対して多角的なアプローチが可能になります。
現在の治療で効果が十分に感じられない方も、TMSを加えることで新たな改善のきっかけが得られるかもしれません。
副作用が少ない非薬物療法
TMS(経頭蓋磁気刺激療法)は、抗うつ薬のように全身へ作用する治療法とは異なり、脳の特定部位にのみ磁気刺激を与える“局所的な非薬物療法”です。
体内に薬を取り込まずに治療効果を得られるため、身体への負担が少なく、副作用が起こりにくいのが大きな特長です。
抗うつ薬は全身を巡って作用するため以下のような副作用がよくみられます。
- 眠気・倦怠感
- 吐き気・下痢・便秘などの消化器症状
- 性機能障害
- 食欲増進・体重増加
- 口渇感
- 排尿障害
こうした副作用のために服薬を中断せざるを得ない方も多く、治療の継続が難しいケースもあります。
一方、TMS治療では脳の背外側前頭前野(DLPFC)などにピンポイントで磁気刺激を行うため、全身性の副作用が極めて少ないです。以下のような軽度な副作用が一部の患者に報告されていますが、いずれも一時的で自然に消えるものがほとんどです。
- 刺激部位の頭皮の痛みや不快感(約30%)
- 顔の筋肉の軽い収縮感・違和感(約30%)
- 軽度の頭痛(約10%未満)
これらは通常、治療を数回続けるうちに慣れ、日常生活に支障をきたすケースは極めて稀です。
また、まれにけいれん発作のリスクも指摘されていますが、発生率は1セッションあたり約0.003%(33,333回に1回)と非常に低い確率です。また起きたとしても自然収束し、重症化することはほとんどないと言われています。てんかん発症例も確認されていません。
薬の副作用に悩んでいる方や、薬を使いたくないという希望をお持ちの方にとって、TMSは安心して続けやすい安全性の高い治療法です。継続性の高さと副作用の少なさは、うつ治療を長く見据える上でも大きなメリットと言えるでしょう。
麻酔・手術・ダウンタイムなし。TMSは日常生活に支障が出にくい治療法
TMS(経頭蓋磁気刺激療法)は、麻酔や手術を必要としない非侵襲的な(体に負担のかからない)治療です。
施術中も意識を保ったままで受けられるため、治療後に麻酔から覚めるのを待つ必要がなく、そのまま車を運転して帰宅したり、職場へ戻ったりすることも可能です。ダウンタイムがないため、日常生活に無理なく組み込みやすいのも大きな特長です。
保険診療のTMSではほとんどの場合入院が必要ですが、自由診療でTMS治療を行う場合は外来通院で実施可能なため、仕事・学業・家事・育児と両立しやすく、忙しい方でも無理なく通院できる点が支持されています。
また保険診療のTMS治療の場合一回当たりの治療に約20分~40分かかりますが、自由診療の場合は約3分のiTBS(間欠的シータバースト刺激)という短時間プロトコルを導入できるため一回あたりの拘束時間も短くなります。自由診療の場合、施術日や時間の柔軟なスケジューリングが可能なことが多いため、「病院に長時間拘束されずに、計画的に治療したい」という方にも適しています。
このように、TMS治療は「できるだけ日常生活を維持しながらうつ治療を進めたい」という希望に応えられる、新しい非侵襲的治療法です。ダウンタイムがなく、身体的・社会的負担の少ないTMSは、多忙な現代人にとって、うつ病治療の現実的な選択肢となりつつあります。
治療期間が短く、効果の現れも早い
抗うつ薬の場合、効果が出始めるまでに少なくとも2〜4週間程度かかるとされており、場合によっては数か月にわたる用量調整や薬剤変更が必要になることもあります。また、副作用が出た場合には中断や変更が必要になり、治療の立ち上がりがさらに遅れるケースもあります。
TMSも積み重ねが大切な治療法ですが、一定のセッション数(20〜30回)の実施で効果を実感する患者が多いとされています。
保険診療でTMS治療を行う場合は1日1回の治療を週5日、4〜6週間継続し、20回〜30回のセッションで効果を得るのが標準的です。
一方、自由診療ではAccelerated TMS(aTMS)という短期集中治療のプロトコルを選択できます。Accelerated(加速された)という言葉の通り、1日に複数回の施術を行い、短期間で必要な回数を集中的にこなすことで治療期間の大幅な圧縮を目指します。
例えば前述でご紹介した米国スタンフォード大学によるSAINT(Stanford Accelerated Intelligent Neuromodulation Therapy)というプロトコルでは、5日間で50回の治療を実施し、約80%の患者が寛解(うつ症状のほとんどが消失)に至ったと報告されています。
このような短期集中型TMSは、「仕事や育児で長期通院が難しい」「できるだけ早く症状を改善したい」というニーズに対応しやすく、柔軟なスケジュール設定が可能な自由診療ならではの強みといえます。
治療期間の短縮と即効性の両立を図れるAccelerated TMSは、現代人の多忙なライフスタイルと高い治療効果の両立をめざす現実的な選択肢となりつつあります。
メンテナンスTMSで再発予防も期待できる
近年では症状の改善だけでなく、再発予防を目的とした「メンテナンスTMS(維持療法)」にも関心が高まっています。これは、うつ病が寛解(=うつ症状がほぼなくなること)した後も、通常のTMS治療より頻度を落とした形(例:月1回)でTMSを継続し、脳の活動を安定させることで再発を防ごうとする治療アプローチです。
メンテナンスTMSによる再発予防に関しては、まだ研究段階ではありますが、一定の効果を示唆する報告が増えつつあり、今後の展開が期待されています。
自由診療の医療機関の中には、こうしたメンテナンスTMSをすでに導入しているところもあり、再発を心配する患者の選択肢として広がりつつあります。
今後さらに研究が進めば、TMSは「うつ病の再発予防」という観点でも活用の幅を広げていく可能性があります。
TMSが効きやすい人とは?治療に向いているタイプを解説
TMS治療はすべての人に同じように効くわけではありません。
研究から、特に効果が出やすい人の特徴が少しずつ明らかになってきています。この記事では、TMS治療に向いているタイプや傾向をわかりやすく解説します。
TMS治療は年齢で効果が変わる?若年層も高齢者も改善できるのか
TMS治療は年齢にかかわらず幅広く実施されていますが、「TMSは若い人の方が効きやすいの?」といった疑問を持つ方も少なくありません。
実際、ある世界的なシステマティックレビューでは、若年者の方がTMS治療の効果を得やすく、年齢が上がるにつれて反応率が低下する傾向が報告されています。
これは加齢によって脳の神経可塑性(神経の柔軟性のような性質)が低下するため、脳回路の再構築を促すTMSの効果が出にくくなるのではないかという要因が考えられています。
とはいえ、「高齢だから効かない」というわけではありません。60〜90代の患者を対象とした海外の大規模研究では、若年層と同程度の改善効果が得られたとする報告もあります。
特に、薬の副作用リスクが高まる高齢者にとって、TMSは安全性が高く副作用が少ない治療法として注目されています。
一方、日本国内では18歳未満の未成年に対するTMSは推奨されていません。
日本精神神経学会のガイドラインにも、「18歳未満には実施すべきでない」と明記されており、安全性と効果の裏付けがまだ十分でないことから慎重な対応が求められています。
まとめると、TMS治療は若年者の方が反応しやすい傾向があるものの、高齢者でも十分な効果が期待できる治療法です。年齢にかかわらず、多くの患者さんにTMS治療の恩恵があることが、複数の研究で示されています。年齢にとらわれず、まずは医師と相談のうえ前向きに検討してみてください。
TMS治療は男性と女性で効果が違う?科学的にわかってきた傾向とは
TMS治療の効果に男女差はあるのでしょうか。
うつ病では女性の方が発症率が高いことが知られていますが、TMS治療における性別による効果の違いについては、長らく議論が続いてきました。ところが近年、国際的な大規模データ解析により、「性別による明確な効果差は見られない」ことが示されつつあります。
ある海外の解析では、うつ病患者984名(女性539名・男性445名)を対象にTMS治療後の反応率・寛解率を比較した結果、HAM-Dスコア(うつ症状の重症度を評価する国際的な指標)における反応率は女性34.3%、男性30.1%と、わずかな差にとどまり、統計的に有意な違いは見られませんでした。
この結果は、TMS治療の効果が性別に左右されにくいことを裏付けるものです。
一方、過去には「女性の方が効果を得やすい可能性がある」とする報告も存在します。ただし、これらは比較的少数例の研究に基づくものであり、近年のより精度の高い解析ではその傾向は否定されています。
男性の患者さんも、「自分は男性だからTMSが効かないのでは」と不安に思う必要はありません。実際に多くの男性がTMSによって症状の改善を実感しており、性別に関係なく効果が期待できる治療法です。
TMS治療は性別を問わず、科学的エビデンスに支えられたうつ病治療の選択肢のひとつです。性別にとらわれず、自分に合った治療を前向きに検討してみましょう。
うつ病エピソードが長引くとTMSは効きにくい?症状の持続期間と治療効果の関係を解説
TMS治療では、「現在のうつ病エピソードの長さ(=今の抑うつ状態がどれだけ続いているか)」が治療効果に関係するのか気になる方も多いかもしれません。
実際、国際的な研究やメタアナリシスでは、「現在のうつ病エピソードが始まってからの期間が短いほど、TMS治療の反応率や寛解率が高くなる」傾向が示されています。これは、うつ症状の発現から間もない段階の方が治療効果がよいことを意味します。
とはいえ、「慢性的に抑うつ状態が続いているからTMSは効かないのでは」と悲観する必要はありません。長期化したうつ病でもTMSによって症状が改善した例は少なくなく、回復にやや時間がかかる可能性があるものの、効果がまったく得られないわけではありません。
実際、TMS治療以外の治療を試したがうまくいかず、症状が慢性化している方にとって、TMS治療は有力な選択肢になります。
現在のうつ病のエピソードが数年にわたって続いている方にとって、「もう手の打ちようがないのでは」と感じることもあるかもしれませんが、TMSはそうした慢性例に対しても希望を与えてくれる治療法の一つです。
大切なのは、年数や期間だけで諦めず、医師と相談しながら最適な治療計画を立てることです。
現在のうつ状態が続いている期間はTMSの反応性にある程度影響するものの、それだけで効果を決めつけることはできません。慢性例でも回復のチャンスは十分にありますので、ぜひ前向きにTMS治療を検討してみてください。
再発したうつ病にTMSは効くのか?繰り返すうつ症状への効果を解説
TMS治療は、「うつ病が初めての人(初発)と、再び発症した人(再発)で効果に違いはあるのか?」と気になる方も多いでしょう。
2016年に行われた国際的なメタアナリシスでは、過去に複数のうつ病エピソードを経験した再発例の方が、初発の患者よりもTMS治療に対する反応率が高いという興味深い結果が報告されました。
一方で、2023年に発表された別の臨床研究では、初発群と再発群の間に統計的に有意な差は認められなかったとされています。
この研究では、抗うつ薬との併用下でTMSを受けた984人の患者を比較し、症状が改善した人の割合(反応率)や、ほぼ消失した人の割合(寛解率)は両群ともに統計的に有意差がなく、どちらでも効果が十分に期待できることが確認されました。
つまり、研究によっては再発の方が効きやすい傾向を示すデータもありますが、全体的には初発でも再発でもTMSの効果は同程度と考えて問題ないといえます。
再発うつ病の患者さんの中には、「何度も繰り返しているからもう効かないのでは…」と不安に思う方もいるかもしれません。しかし、むしろTMS治療は再発例においても十分な改善効果を示すことがわかっており、再発だからといって悲観する必要はありません。
初めてうつ病を経験している方も、何度か再発を経験してきた方も、TMS治療は前向きに検討できる治療法のひとつです。ご自身に合った治療を安心して選んでいただければと思います。
うつ病の重症度でTMS治療の効果は変わる?軽症・中等症・重症での違いを解説
うつ病は症状の重さに応じて軽症・中等症・重症と分類されますが、TMS(経頭蓋磁気刺激)治療の効果はこの重症度によって変わるのでしょうか。
重度のうつ病だと「TMSが効きにくいのでは」と不安になる方もいれば、逆に軽症だと「そもそもTMSは必要なの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
研究によれば、うつ病の重症度が低い(軽症〜中等症)方がTMSによって症状が寛解する割合が高い傾向が示されています。
たとえば、TMS治療を受けた患者41名を対象とした分析では、治療終了時に症状がほぼ消失した人の割合(寛解率)は軽症〜中等症群で有意に高く、重症群では低かったという結果が出ています。
つまり、重症度はTMSの治療成功に影響する一因であり、症状が深刻化する前にTMSを開始することで、より高い効果が得られやすい可能性があるのです。
とはいえ、重症だからといってTMSの効果が見込めないわけではありません。実際には、重症うつ病の患者でもTMSによって徐々に症状が改善した例は数多く報告されています。
一部の研究では、セッションを重ねるごとに段階的な改善が見られた重症患者もおり、「重症=TMSが効かない」という図式は成り立ちません。
また、TMSは非侵襲的で副作用も比較的少ないため、身体的負担の少ない治療として重症患者にとっても選択肢となり得ます。
ただし、重度のうつ症状を呈している場合は、電気けいれん療法(ECT)なども含めた包括的な治療検討が必要になるケースもあります。TMSが自分に合った治療かどうかを判断するには、医師としっかり相談しながら治療方針を決めることが大切です。
このように、TMS治療は重症度によって反応のしやすさに違いがあるものの、どの段階でも希望を持てる治療法のひとつです。
軽症〜中等症の方はもちろん、重症の方もあきらめずに前向きに検討してみてください。
抗うつ薬が効かないときにTMSは効く?治療抵抗性うつ病への効果を補足解説
すでに紹介したとおり、TMS(経頭蓋磁気刺激)は「治療抵抗性うつ病(TRD)」に対しても有効な治療法とされていますが、今回はその“治療抵抗性の高さ”がTMS効果に与える影響について、もう少し踏み込んで解説します。
結論から言えば、これまでに試した抗うつ薬の種類が多い、薬物治療への反応が乏しかった――といった「高度の治療抵抗性」を示すケースでは、TMSの反応率がやや低下する傾向が、近年の研究でも明らかになっています。
2023年の体系的レビューでは、「治療抵抗性の強さ」がTMSの効果を左右する独立した予測因子であるとされ、治療歴が長く薬剤数が多い患者ほど効果が得にくい可能性が示唆されました。
とはいえ、これはTMSが無効という意味ではありません。たとえば、抗うつ薬を2剤以上試しても改善がなかった患者においても、TMSによって約37〜50%が症状の大幅な改善を経験したとする報告があります。
特に、TMS開始前に薬物治療を延々と続けるより、早期にTMSへ切り替えた方が効果的だったとする研究も増えてきています。
治療抵抗性が高いほど効果は出にくい可能性があることは事実ですが、「薬が効かなかった方こそTMSを積極的に検討してほしい」という点はむしろ強調すべきです。TMSは難治例に対しても希望をもたらす選択肢のひとつとして、科学的根拠に裏打ちされた現実的な治療法なのです。
不安症状が強いうつ病にTMSは効く?不安障害との関係と効果を解説
うつ病に、以下のような「不安障害」を併発している方も少なくありません。
- パニック障害(パニック症)
- 社交不安障害(社交不安症)
- 全般性不安障害(全般性不安症)
こうした「不安症状が強い場合、TMS(経頭蓋磁気刺激)は効くのか?」と不安に思う方も多いでしょう。
実際、近年の研究では不安障害の併存がTMSの反応率をやや下げる可能性が示されています。2025年の機械学習モデル解析でも、不安障害をもつ患者はTMSに対して非反応となるリスクがやや高いとされました。
とはいえ、TMSが効かないというわけではありません。むしろ、不安障害を合併していてもうつ症状と不安症状の双方が50%前後改善したという報告もあり、非併発のうつ病患者と同等の効果が得られたケースも存在します。
さらにTMSには、「うつ」だけでなく「不安」にも直接作用するという研究もあります。右DLPFC(背外側前頭前野)への低頻度刺激や両側DLPFCへの刺激では、身体的不安・パニック様症状・主観的不安などが著しく軽減されたという結果が出ています。不安が強い方にとって、TMSは“うつ”と“不安”の両方に働きかける心強い治療選択肢となり得るのです。
※なお、かつて「不安障害」に含まれていた 強迫性障害(強迫症) や PTSD(心的外傷後ストレス障害) は、現在では別のカテゴリーに分類されていますが、不安症状との関連性が深く、TMSの応用も進められています。
総合すると、不安障害の併存はTMSの効果に影響する要素のひとつではあるものの、それが理由でTMSが無意味になるわけではありません。不安とうつの両方に悩む方こそ、TMSという選択肢を前向きに検討する価値があります。
まとめ
TMS治療は「薬に頼らない新しい選択肢」として、薬の効果が乏しい方、副作用で悩んでいる方、そしてできるだけ日常生活に支障を出さずに治療を進めたい方にとって、現実的かつ前向きなうつ治療の選択肢となります。
抗うつ薬とは異なるメカニズムで脳に直接アプローチし、比較的副作用が少なく、身体に優しい点が大きな特長です。
さらに、薬物療法やカウンセリングとの併用も可能で、治療の相乗効果が期待できるほか、自由診療では短期間で集中的に行うAccelerated TMS(aTMS)や、再発予防を目的としたメンテナンスTMSなど、ニーズに応じた柔軟な治療プランも選べます。
金山こころとねむりのクリニックでは、自由診療によるTMS治療を行っており、通院や生活スタイルに合わせたオーダーメイドの治療をご提案しています。
「薬に頼らずうつ病を治したい」「仕事や家庭と両立しながら治療を受けたい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。



