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TMS治療とは?メカニズム・効果・副作用などについて解説

[2025.12.12]

TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)とは

TMS治療とは、磁気を使って脳の神経活動を調整する新しいうつ病治療法です。正式には「反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)」と呼ばれ、薬を使わずに脳の特定の部位を刺激できるのが大きな特徴で、副作用が少なく安全性が高いとされています。

主にうつ病の治療に用いられており、とくに抗うつ薬で十分な効果が得られなかった方(いわゆる薬が効きにくいうつ病=治療抵抗性うつ病)への新たな選択肢として注目されています。

アメリカでは2008年に米国食品医薬品局(FDA)がTMS治療をうつ病治療として承認し、欧米では標準的な治療法のひとつとなっています。

日本でも2019年6月から、「薬の治療で効果が出なかった成人のうつ病患者」を対象にTMS治療が健康保険で受けられるようになりました。ただし、保険診療として治療を受けるには、複数の抗うつ薬が効かなかったことやうつの症状が中等度であること、原則として入院治療が必要なことなど、いくつかの厳しい条件があります。

このため実際には、自由診療(保険が使えない自費の治療)として外来で受けるケースが多いのが現状です。

この記事では、TMS治療とは何かを中心に、その仕組みや適応疾患、効果、副作用などをやさしく解説します。TMS治療を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

TMS治療のメカニズム

TMS治療のメカニズムは、磁気刺激によって脳の神経活動をやさしく調整することにあります。これは「ニューロモジュレーション(神経調節)」と呼ばれる治療法の一種で、脳の特定部位に対して安全で非侵襲的に働きかけます。

専用の装置から磁気パルスを発生させることで、頭蓋骨の内側にごく微弱な電気的変化(渦電流)が生じます。この電流は脳にダメージを与えるようなものではなく、TMS治療は手術や麻酔を必要としないため、治療後すぐに日常生活に戻れる点も大きな特徴です。

この刺激により神経細胞(ニューロン)が一時的に活性化され、神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)のバランスや神経細胞間のつながり(シナプス)の働きに変化が起こる(神経可塑性)と考えられています。これにより脳神経機能の回復が期待されますが、詳細な仕組みは今も研究が続けられています。

特にうつ病では、意欲や感情をコントロールする前頭前野の機能低下が指摘されており、TMS治療ではその一部である背外側前頭前野(DLPFC)に繰り返し刺激を与えることで、機能の改善を目指します。

現在も国内外で臨床研究が進められており、TMS治療の作用メカニズムのさらなる解明が期待されています。

TMS治療の適応疾患

TMS治療の適応疾患は以下の通りです。

  • うつ病
  • 強迫性障害(OCD)
  • その他の疾患(双極性障害・神経障害性疼痛・線維筋痛症・脳卒中後の運動麻痺・ニコチン依存症など)

現在、TMS治療は上記のようなさまざまな疾患への応用が模索されています。それぞれについて詳しく解説します。

うつ病

TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)は、うつ病に対して広く用いられている非薬物療法のひとつです。

特に、抗うつ薬で十分な効果が得られなかった方や、副作用によって服薬の継続が難しい方に対して、有効性が報告されています。

近年では、薬を使わずにうつ症状を改善したい方や、治療の早い段階でTMSを試したい方にとっても、有用な選択肢として注目されています。

日本では2019年から健康保険でTMS治療を受けられるようになりましたが、保険適用を受けるには、「複数の抗うつ薬を試しても十分な効果が得られなかったこと」「原則として約2か月間の入院が必要であること」「うつ症状が中等度であること(軽症でも重症でもない)」など、いくつかの厳しい条件が設けられています。

そのため現在は、多くの医療機関で自由診療(自費診療)として通院でのTMS治療が提供されており、日常生活を送りながら無理なく治療を進めることができます。

また、自由診療では「accelerated TMS(短期集中治療)」と呼ばれる1日複数回の治療スケジュールにも対応している場合があり、短期間での集中的な改善を目指す方に選ばれています。

「できるだけ早く症状を軽くしたい」「薬に頼らず改善したい」といったニーズに応じて、ライフスタイルに合った柔軟な治療設計が可能です。

強迫性障害(OCD)

強迫性障害(OCD)は、自分の意思とは関係なく不快な考え(強迫観念)が繰り返し頭に浮かび、それを打ち消すために一定の行動(強迫行為)を繰り返してしまう精神疾患です。

洗浄や確認行為などが代表的で、生活に大きな支障をきたすこともあります。

強迫性障害の治療は、主にSSRIなどの抗うつ薬を中心とした薬物療法や認知行動療法(CBT)の一種である曝露反応妨害法(ERP)が中心ですが、なかにはこうした方法で十分な改善が得られない「治療抵抗性」のケースも存在します。

そのような方への新たな治療選択肢として注目されているのが、TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)です。

TMSは頭部に磁気刺激を与えて脳の神経活動を調整する非侵襲的な治療法で、アメリカでは2018年に強迫性障害への治療適応としてFDA(米国食品医薬品局)の承認を受けています。

とくに強迫性障害に対するTMSでは、前帯状皮質(ACC)背内側前頭前野(DMPFC)といった、強迫症状に関与する脳領域への刺激が効果的とされ、専用コイルでより深部に磁気を届けるdeep TMS(dTMS/ディープTMS)という手法が国際的に高い関心を集めています。

日本では強迫性障害(OCD)に対するTMS治療は保険適用外となっているものの、自由診療(自費診療)として一部のクリニックで導入されており、薬や心理療法では効果が十分に得られなかった方にとって、有力な選択肢の一つになり得ます。

また、薬の副作用が心配な方でも受けやすく、今後の研究やエビデンスの蓄積によって保険適用の拡大や適応疾患の増加が期待されています。

その他の病気

TMS治療は、うつ病や強迫性障害に限らず、さまざまな疾患への応用が研究されており、次のような領域で効果が期待されています。

対象となる疾患例:

  • 双極性障害(躁うつ病):うつ状態に対する治療効果
  • 神経障害性疼痛:帯状疱疹後神経痛や坐骨神経痛などの慢性疼痛の緩和
  • 線維筋痛症:原因不明の慢性疼痛に対する痛みの軽減効果
  • 脳卒中後の運動麻痺:運動機能回復を目的としたリハビリ治療
  • ニコチン依存症:喫煙依存に対する禁煙支援

このように、TMS治療は精神疾患だけでなく、疼痛緩和や神経リハビリテーション、依存症治療など多岐にわたる領域への可能性を秘めています。

ただし、これらの疾患に対するTMSの効果は現時点では試験的・先進的治療の段階であり、その有効性や安全性を確立するためには今後さらなるエビデンスの蓄積が必要です。

世界中で臨床研究が進められており、その成果によって適応疾患の拡大が期待されます。

日本においても、科学的根拠が整えば保険適用範囲の拡大が見込まれる一方で、現在は多くの疾患において自由診療での実施に限られているのが現状です。

TMS治療の特徴

TMS治療の特徴として、以下の5つが挙げられます。

  • 治療抵抗性うつ病にも効果がみられる
  • 安全性が高い
  • 副作用が少ない
  • 治療時間が短く、効果発現が比較的早い
  • 再発予防にも効果がある?注目されるメンテナンスTMS

ここでは上記5つの特徴についてそれぞれ解説します。

治療抵抗性うつ病にも効果がみられる

TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)は、抗うつ薬による治療で十分な効果が得られなかった「治療抵抗性うつ病(TRD)」に対して、科学的に有効性が認められている非侵襲的な脳刺激治療です。

手術や麻酔は不要で、副作用が少ないことから、薬が合わない方や増薬に抵抗がある方にとって、有力な選択肢となり得ます。

アメリカでは2008年に米国食品医薬品局(FDA)がTMSをうつ病治療として承認して以降、欧米各国で治療抵抗性うつ病(TRD)に対する標準治療のひとつとして広く導入されています。

複数の臨床研究やメタアナリシスでは、TMSが抗うつ薬に匹敵する中等度の効果を示すことが報告されており、従来の薬物療法で改善しなかった患者にとって、科学的根拠に基づいた治療の新たな選択肢といえます。

TMS治療の効果を十分に引き出すには、1回の刺激で終わるのではなく、20〜30回程度の継続的な治療が推奨されています。繰り返しの磁気刺激によって神経回路の活動を整え、うつ症状の改善を促すと考えられています。

TMSの効果は、初回の数回で急激に現れるわけではなく、治療を重ねる中で徐々に気分や意欲の変化を実感するケースが大半です。計画的な通院と継続が治療効果の鍵となります。

薬物治療に限界を感じている方、副作用に悩まされている方、あるいはできるだけ薬に頼らず改善を目指したい方にとって、TMS治療は根拠に基づいた希望ある非薬物療法として、検討する価値のある治療法です。

安全性が高い

TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)は、国際的にも安全性の高い治療法として広く評価されています。

2008年にアメリカのFDA(米国食品医薬品局)がうつ病治療への使用を正式に承認して以降、欧米を中心に数多くの医療機関で導入され、世界中で臨床実績が積み重ねられてきました。

TMSは、全身麻酔や手術を必要としない非侵襲的なアプローチであり、身体への負担が非常に少ない点が特徴です。治療中の重大な副作用は極めてまれであり、安全性の高さが科学的にも確認されています。

また、治療後すぐに日常生活に戻ることができる(ダウンタイムがない)ため、仕事や家庭と両立しながら継続しやすいのもTMSの大きなメリットです。

副作用が少ない

TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)は、副作用の少なさが大きな特長です。

抗うつ薬などの薬物療法では、薬が全身に作用するため、次のような副作用が問題になることがあります。

  • 眠気
  • 倦怠感
  • 体重増加
  • 吐き気、下痢・便秘などの消化器症状

これに対して、TMS治療は頭部の特定部位に磁気刺激を与える局所的な治療法であり、薬のように全身を巡る作用がないため、上記のような副作用が生じにくいのが大きな利点です。

全身的な副作用がきわめて少ないことは、TMSを安心して継続できる理由のひとつ。

特に「薬の副作用がつらい」「体調を崩したくない」という方にとって、体へのやさしさと治療効果を両立できる新しい選択肢として注目されています。

治療時間が短く、効果発現が比較的早い

TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)は、1回あたりの施術時間が比較的短く、日常生活への影響を最小限に抑えられる点が大きな特長です。

施術時間は使用されるプロトコルによって異なります。

日本の保険診療で実施されているrTMS(反復経頭蓋磁気刺激)では、標準的なプロトコルで1回あたり37.5分の刺激時間が必要でしたが、現在では18.75分に短縮されたプロトコルも一部で保険適用となり、より柔軟な運用が可能になっています。

一方、自由診療では、約3分で1セッションが完了するiTBS(intermittent Theta Burst Stimulation/シータバースト刺激)を実施することができ、治療時間を大幅に短縮できます。

iTBSは、施術時間が大幅に短縮されるにもかかわらず、従来のrTMSと同程度の効果が得られることが、複数の臨床研究で示されています。そのため、効率性と効果の両立を目指す治療法として注目されています。

さらに自由診療では、accelerated TMS(短期集中治療)と呼ばれる、1日に複数回の施術を行う治療プログラムも可能です。

従来の保険診療でのTMSでは週5日×4〜6週間かけて計20〜30回の治療を行うのが標準ですが、accelerated TMSではより短期間に集中して治療を受けることができるため、効果の発現も比較的早いとされています。

こうした柔軟な治療計画により、「できるだけ早く症状を改善したい」「毎日通院するのは難しいが、休みの日にまとめて治療したい」といった希望にも対応可能です。

TMSは服薬治療のように毎日忘れずに服用する必要がなく、スケジュールに合わせて通院すればよいため、自己管理の負担も少なくなります。

このように、「施術時間が短い」「効果の実感が比較的早い」「治療の柔軟性が高い」といった点は、TMS治療を選ぶ上での大きなメリットです。患者さん自身のモチベーション維持にもつながるでしょう。

再発予防にも効果がある?注目されるメンテナンスTMS

TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)は、脳の神経ネットワークに直接アプローチして、うつ症状の改善を図る治療法です。

薬に頼らない非侵襲的な方法として注目される中、「TMSで寛解(治療により症状が消失すること)した後、再発を防ぐことはできるのか?」という関心も高まりつつあります。

現時点では、TMS治療後の再発率について明確な科学的結論は出ていません。いくつかの臨床研究では追跡データが報告されているものの、評価方法や再発の定義に違いがあるため、統一的な見解にまでは至っていないのが実情です。

その中で近年注目されているのが、メンテナンスTMS(維持療法)というアプローチです。これは、TMSで症状が改善・寛解したあとも、通常より頻度を抑えた形(例:月に1回など)で定期的にTMSを継続し、再発の予防を目指す治療法です。

現在、世界中で研究が進められており、一定の効果を示唆する報告も出てきており、今後の研究に期待が集まっています。

まだ検証段階ではあるものの、「再発が心配」「長く安定した状態を維持したい」という方にとって、メンテナンスTMSは将来性のある選択肢といえるでしょう。実際、自由診療の一部医療機関では導入が進みつつあり、患者の希望に応じた個別対応が始まっています。

今後さらに研究が進めば、TMSは「症状の改善」だけでなく「再発予防」という新たな役割を担う可能性もあります。

長期的な安定を目指す治療戦略の一つとして、メンテナンスTMSは今後ますます注目されていくでしょう。

TMS治療のメリット・デメリット

TMS治療は薬を使わずに脳の働きを調整できる画期的な治療方法ですが、当然メリットとデメリットがあります。

ここではTMS治療の主なメリット・デメリットについて解説します。

TMS治療のメリット

TMS治療の主なメリットは以下の通りです。

副作用が少ない

TMSは脳の特定部位を磁気で刺激する非薬物的な治療方法で、全身に作用する薬とは異なり、比較的副作用の頻度が少ないという報告があります。

眠気、体重増加、下痢、便秘、吐き気、性機能障害など、薬に伴う副作用が気になる方にとって安心感のある治療法です。

安全性が高い

TMSは手術や麻酔、注射を必要としない非侵襲的(身体を傷つけない)治療法であり、治療後も安静の必要がなく身体への負担が少ない安全性の高い施術です。

日常生活への支障が少ない

治療後すぐに仕事や家事に戻れることから、日常生活に無理なく取り入れられる点が好まれています。

自由診療では1回約3分で終了する短時間プロトコル、「iTBS(intermittent Theta Burst Stimulation/シータバースト刺激)」を実施することができ、特に多忙な方に適しています。

効果の表れが比較的早い

自由診療では1日複数回施術を行うaccelerated TMS(短期集中治療)の選択もでき、通常より早い段階で効果を実感できる可能性があります。早期改善を希望する方に適した治療です。

薬やカウンセリングとの併用が可能

TMSは薬物療法や認知行動療法(CBT)などの心理カウンセリングとの併用が可能です。

異なる仕組みの治療を組み合わせることで相乗効果を期待できます。単独で効果が限定的な場合にも、追加オプションとしての選択肢となり得ます。

治療抵抗性うつ病(TRD)にも対応できる可能性

通常の薬物療法で十分な効果が得られない「治療抵抗性うつ病(Treatment-Resistant Depression)」に対しても、TMSは一定の有効性を示すことがあり、国内外で注目されています。お薬が効きにくかった方の新たな選択肢になり得ます。

認知機能への悪影響が少ない

TMSは記憶や集中力などの認知機能に悪影響を与えにくいとされます。

うつ病でよく見られる「思考制止(しこうせいし)」と呼ばれる状態—考えがまとまらない、頭がぼんやりする—が改善されたと感じる方も多く、頭がすっきりするという声も聞かれます。

メンテナンスTMSによる再発予防の可能性

うつ症状が改善・寛解した後に月1回など治療頻度を抑えつつTMSを継続する「メンテナンスTMS」は、再発予防を目指すアプローチとして注目されています。

今後の研究結果によっては、標準的な再発予防法のひとつになる可能性もあり、すでに一部の自由診療を行う医療機関では導入されています。

TMS治療のデメリット

TMS治療には以下のようなデメリットがあります。

保険適用の条件が厳しい

TMS治療は一部のケースで健康保険が適用されますが、対象は「中等度のうつ病かつ薬物療法に十分な効果がなかった難治性の場合」に限られます。軽症や重症のうつ病は適用外であり、強迫性障害など、うつ病以外の疾患も保険適用外です。

さらに、保険診療では原則として約2か月間の入院が必要とされており、保険適用でTMS治療を提供している医療機関自体が全国的に非常に限られているのが現状です。

そのため、自由診療としてTMSを受けるケースが大半を占めており、この場合は全額自己負担となります。費用は1回あたり数千円〜1万円以上になることもあり、継続治療に伴う経済的な負担は無視できません。

通院回数が多い

TMS治療は継続的な刺激によって効果を発揮するため、合計20〜30回程度の治療の積み重ねが必要です。そのため、週に複数回の通院が必要となり、仕事や家庭のスケジュールとの両立が難しい方にとってはハードルになることがあります。

ただし、自由診療ではaccelerated TMS(短期集中治療)と呼ばれる1日複数回施術の選択も可能であり、治療期間を短縮することもできます。

効果には個人差がある

TMSは多くの臨床研究で有効性が示されていますが、すべての方に改善効果が現れるわけではありません。特に初期の段階では効果を感じにくいこともあり、ある程度の継続が必要なケースもあります。

個人差を踏まえて経過を見ながら評価し、必要に応じて治療方針を柔軟に調整することが重要です。

治療内容の違いがわかりにくい

自由診療では医療機関ごとにTMSのプロトコルや使用機器が異なることがあります。そのため、TMSに初めて触れる方にとっては「どの治療が自分に合っているのか」がわかりづらい面もあります。

治療前に十分な説明を受け、比較検討したうえでの選択が重要です。

実施医療機関がまだ限られている

TMS治療を導入している医療機関は年々増加していますが、依然として都市部を中心とした導入にとどまっており、地方では選択肢が限られているのが実情です。

通院の利便性が治療継続の鍵になるため、地域格差の解消が今後の課題です。

長期的なエビデンスは今後に期待

TMSはFDA(米国食品医薬品局)などによって有効性が認められており、多くの臨床研究でも短期的な改善効果が示されています。

しかし、長期的な寛解維持や再発予防の効果についてはまだ研究途上の段階であり、今後の大規模な長期追跡調査が待たれる領域です。

TMS治療の副作用

TMS治療で起こり得る副作用は以下の通りです。

  • 頭皮の刺激感や顔まわりの筋肉の違和感
  • 頭痛や首・肩のこり
  • 聴力やめまいに関する症状
  • 精神症状の変化
  • けいれん発作

ここでは上記5つの副作用についてそれぞれ解説します。

頭皮の刺激感や顔まわりの筋肉の違和感

TMS治療中によくみられる副作用の一つが、磁気刺激による頭皮への刺激感や、顔面の一部がピクピクと動く軽い痙攣です。

磁気刺激によって頭部の筋肉や神経が刺激されるために生じる現象で、頭皮の痛みや刺激部位の不快感約30%顔まわりの筋肉の収縮や違和感約30%の患者さんに認められると報告されています。

これらはいずれも治療中に一時的に起こるもので、刺激に慣れてくるに従って軽減する傾向があります。

最初の数回は刺激に対する違和感や痛みを強く感じる場合もありますが、回数を重ねるうちに慣れることがほとんどです。刺激強度の調整やコイルの当て方を工夫することで、不快感を緩和することが可能です。

頭痛や首・肩のこり

TMS治療後に一過性の軽い頭痛(発生率10%未満)首・肩のこり(約10%)を感じる方もいますが、ほとんどは市販の鎮痛薬で対処可能で、数時間以内におさまります。

治療の継続が困難になるほど深刻化することは極めてまれです。

聴力やめまいに関する症状

TMS治療ではコイルから「カチカチ」という比較的大きな音が発生します。

そのため、聴覚が敏感な方では耳鳴り軽いめまい感を感じる場合がありますが、発生頻度は非常に低く、ほとんどが治療中のみで、終了後には自然に軽快します。

長期的な聴力・平衡覚障害が生じたといった報告は確認されていません。

精神症状の変化

TMS治療はうつ症状の改善に効果を発揮しますが、ごくまれに精神症状が一時的に変化または悪化する例があります。

特に注意すべき副作用として、躁転(そうてん/気分が異常に高揚して活動的・衝動的になる状態)が知られています。

これは双極性障害(躁うつ病)の素因を持つ方に発生することがあり、発生率は1%未満とされています。

このように頻度は非常に低いため、過度に心配する必要はありませんが、事前に双極性障害(躁うつ病)の有無を十分に確認することでリスクを軽減できます。

また、治療期間中に気分の著しい高揚や不眠の悪化など異変を感じた場合は、速やかに医療スタッフに相談することが重要です。

けいれん発作

極めてまれではありますが、注意すべき重篤な副作用としてけいれん発作が報告されています。

発生率は治療1セッションあたり約0.003%、つまりおよそ33,333回の治療で1回程度と見積もられています。

報告例では、いずれも治療中または直後に自然終息しており、重症化や再発はなく、新たなてんかん発症につながったケースも確認されていません。

TMS治療が適している人

TMS治療が適していると考えられる方は以下の通りです。

  • 薬に頼らず、非薬物療法で改善を目指したい方
  • 薬物療法を試しても十分な効果が得られなかった方
  • 薬の副作用に悩んでいる方
  • 薬物療法やカウンセリングとの併用で、より高い効果を目指したい方
  • 短期間での改善を希望し、集中的な治療(accelerated TMS)を望む方
  • 日常生活・仕事・学業と両立しながら治療を受けたい方

上記に当てはまる方は、TMS治療が一つの有効な選択肢となり得ます。

ご自身の症状や生活状況に合った治療法を見つけるためにも、まずは専門の医療機関でご相談いただくことをおすすめします。

TMS治療が適さない方・慎重な判断が求められる方

TMS治療は、比較的副作用が少なく安全性の高い非薬物療法として広まりつつありますが、すべての方に無条件で実施できるわけではありません。

身体の状態や治療歴によっては、治療を行えなかったり、医師と十分に話し合いながら慎重に判断すべきケースもあります。

以下に該当する可能性のある方は、必ず医療機関にて相談し、他の治療法も含めて適応の有無を検討しましょう。

18歳未満の方

18歳未満の年齢層に対するTMS治療については、安全性や有効性を裏付ける十分な臨床エビデンスがまだ確立されていません。そのため、未成年に対する施術は原則として避けるべきとされています。

日本精神神経学会の治療ガイドラインでも、「18歳未満の若年者にはTMS治療を行うべきではない」と明記されており、国内の医療現場でも慎重な対応が求められています。

頭部に磁性金属のインプラントがある方

人工内耳や脳動脈瘤クリップ、頭蓋骨固定プレートなど、磁性を持つ金属製のインプラントが頭部にある方は、TMS治療に際して注意が必要です。

現在では、磁気に反応しない非磁性体(金属だが磁力の影響を受けない素材)のインプラントも広く使用されていますが、材質が不明な場合や、磁気刺激の影響を受けやすい部位に埋め込まれている場合には、安全性の観点から治療を控えることがあります。

磁気刺激によってインプラントが過熱したり移動するリスクがあるため、安全性が確認できないケースでは施術を見送る判断が推奨されます。

なお、歯科治療で用いられる金属(詰め物・ブリッジなど)は通常、TMSの影響を受けにくいとされており、多くの場合問題ありませんが、念のため事前に医療機関へ相談することをおすすめします。

電子医療機器が体内にある方

深部脳刺激装置(DBS)、迷走神経刺激装置(VNS)、ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)などの電子医療機器を体内に有している場合は注意が必要です。

TMSの磁気がこれらの機器の動作に影響を及ぼす可能性があるため、基本的にTMS治療は行えません。

ただし、頭部から離れた部位に装着されているインスリンポンプなどについては、通常問題ないとされています。個別の状況によって判断されますので、必ず申告が必要です。

その他、慎重な適応判断が必要なケース

次のような方は、TMS治療の可否を医師が総合的に判断する必要があります。

  • 過去にてんかん発作を起こしたことがある方
  • 脳疾患の診断を受けている方
  • 重篤な持病があり体調が安定していない方
  • 妊娠中の方

なお、TMSの磁気刺激が届くのは頭部の皮膚下数センチ程度にとどまるため、胎児への直接的な影響はほぼないと考えられていますが、安全性を最優先に慎重な対応が求められます。

まとめ

TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)は、磁気刺激によって脳の働きを調整し、うつ病などの症状改善を目指す新しい治療法です。

薬物療法とは異なるメカニズムで作用するため、従来の治療で効果が得られなかった方や薬の副作用に悩む方にも適用できる可能性があります。

非侵襲的で安全性が高く、副作用も少ない点は大きな魅力であり、多くの国で難治性うつ病に対する有望な選択肢となっています。

一方で、てんかんや重篤な心疾患をお持ちの方、妊娠中の方、体内に特定の医療機器や磁性金属がある方などは治療が制限される場合があります。治療を検討する際は専門医による適応評価が不可欠です。

金山こころとねむりのクリニックでは、自由診療によるTMS治療をご提供しています。

当院では丁寧なカウンセリングを通じて患者さん一人ひとりの症状や背景に合った治療方法をご提案いたします。

TMS治療をご検討中の方、うつ病の治療にお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。科学的エビデンスに基づく安心安全な治療で、こころの健康回復をサポートいたします。

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